身寄りなし76歳が「孤独死」を覚悟した凄絶背景 単身世帯4割、誰もが「孤独難民」になりうる
東洋経済オンライン / 2024年11月10日 8時0分
これらは本来、病院の業務ではない。「10年前まではそこまで問題になっておらず、何となく僕らがやっていた」(鎌村さん)が、近年家族のいない患者が増えて対応に追われているという。
今は健康で家族がいる人でも、いざ入院したときに「お金を下ろしてきて」と頼める人は家族以外に何人いるだろうか。
内閣府が日本と米国、ドイツ、スウェーデンを比較した調査によると、日本の高齢男性は「親しい友人がいない」と答えた人が4割で最多だった。同調査で、日本の高齢者は、家族以外に頼れる人として「友人」「近所の人」と回答した人がそれぞれ約15%で、最も低かった。
妹捜しを諦めたときに
孤独に付け込む犯罪も起きている。都内の教育機関で働く康夫(仮名、50代)は昨年12月、「国際ロマンス詐欺」の被害に遭った。これは、SNSなどで出会った外国人を名乗る者が、好意を抱かせて金銭をだまし取る詐欺だ。
きっかけは、フェイスブックの友達申請だった。相手は「キャサリン・ローランド」と名乗る女性。米軍の軍医としてシリアの米軍基地に勤務しているという。テロリスト集団と戦って負傷した兵士が運ばれている様子だという写真も送られてきた。危険な地から一刻も早く逃れたいという。
キャサリンは日本で生まれたが、両親が他界して孤児になり、アメリカで育ったのだという。「日本人の知り合いがいないから親しい友達が欲しい。退役したら日本に行きたい」と夢を語った。ついに退役が決まり、「訪日するために1億円ほどの退職金を康夫の家に送りたい。金を運ぶ警備業者に補償金として4500ドルを支払ってほしい」と頼まれた。
康夫は「日本に行ったら一緒に旅行したい」「金は必ず返す」という言葉を信じ、指定された口座に約60万円を振り込んだ。
それだけでは終わらなかった。警備業者を名乗る男は、さらに2万7000ドルの追加料金を要求。康夫は再び銀行に向かったが、銀行職員が詐欺ではないかと気づき、被害は食い止められた。すぐに警察に相談したものの、振り込んだ60万円のうち50万円はすでに別口座に送金されており、取り戻すことはできなかった。
SNS型ロマンス詐欺の被害が急増
SNSを介したロマンス詐欺は近年被害が急増し、被害額は2023年12月単月で24.6億円に上る。1件当たりの平均被害額は1000万円を超え、1億円超の被害も発生。被害者は男女ともに40〜60代が多い。
康夫がキャサリンとやり取りをした期間は、たった2週間だった。毎日LINEで3、4回のメッセージを交換。相手は家族と写る写真も送ってきた。たわいない会話が、康夫にとっては貴重だった。
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