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「いじり」と「いじめ」境界を間違えないリーダー術 3つの特徴を比べて理解 上司が意識すべきこと

東洋経済オンライン / 2024年11月11日 7時30分

友人や同僚ならまだしも、上司と部下との関係はよりいっそうデリケートだ。上司は部下をいじったとしても、部下は「いじめ」「ハラスメント」と受け止めることもある。

新しく加わったメンバーなど、お互いによく知らない場合は、まず「心を許せる間柄」になるのが大事だ。そのためにはお互いを知ることから始めよう。

表面的なことではない。できれば、あまり多くの人には開示していないことを共有するのだ。そうすることで「特別に心を許せる間柄」になりやすい。そしてこの順番は、もちろん上司からだ。上司から積極的に自己開示しよう。

たとえば「俺はファッションセンスが悪すぎるのか、“課長とネクタイかぶると自信なくなります”って、よく後輩からいじられるんだよね」など、あえて「スキ」を見せるのだ。そうすると部下も「スキ」を見せてくれるかもしれない。

だんだんお互い心を開いて話せる状態になったら、少しずついじりを入れてもいいだろう。やってはいけないのは、関係ができてもいないときから、いったんいじって反応を見ることだ。

また脳の思考プログラムは「インパクト×回数」でできている。小さなインパクトであっても、回数を重ねられると、だんだん思考プログラムが変わってくるものだ。

「お前は本当に痩せてるな。ちゃんと飯(めし)食ってるか?」、一回ぐらいこのようなことを言われても、なんとも思わない部下も、会うたびに言われたらだんだん苦痛を覚えるようになるケースがあるので注意したい。

繰り返し「いつ見ても痩せてるなァ」「もっと食えよ」と言われ続けたせいで、上司と顔を合わせるたびに体が反応し、食欲がなくなったりするのだ。

だから上司は、まず「立場の違い」を意識すべきである。部下は立場上、反論しづらいのだから、「いじり」のつもりでも「いじめ」になりやすいと肝に銘じておいてほしい。

さらに「部下の変化」にも敏感になることだ。今まで笑顔で受け入れていた部下が、急に態度を変えることもある。

また部下本人はよくても、それを見ている他のメンバーが不快に感じるケースもあるだろう。上司の立場を利用して身体的な特徴をいじっていると周りに受け止められてもいけない。

「いじり」がなくてもよい関係は作れるはず

「いじり」は、時として職場を明るくする潤滑油になる。

ある中小企業の飲み会で、まだ入社3年目の女性スタッフが、「うちの社長は太っ腹!」と大きな声で言うと、それを耳にした社長が大きなお腹を叩いて喜んでいた。

「君も食べてばっかりいると、俺みたいなお腹になるぞ」

「私も社長のように太っ腹になりたいです」

楽しそうなこの2人のやり取りを聞いて、周りの社員たちも微笑んでいた。社員同士の関係性が深いせいか、このような掛け合いが「場」をよくするのだ。

繰り返すが「いじり」は双方向が基本だ。使い方を間違えれば、大きな問題に発展する。だから特に上司は慎重にすべきだ。

部下は上司や先輩とよい関係になることで、職場で孤独を覚えなくてもよくなる。仕事の生産性もアップするはずだ。だが、そこに必ずしも「いじり」は必要ない。大事なことはお互いが自己開示を繰り返し「心を許せる状態」になることである。

「いじり」と「いじめ」の境界線は、相手との関係性や状況によって変化する。本人はもちろんのこと、常に周りの反応も見ながら、適切な距離感でコミュニケーションをとっていきたいものだ。

横山 信弘:経営コラムニスト

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