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「トイレをきれいに」より圧倒的に効果的な文言 人を動かすナッジと逆効果を生むナッジとは

東洋経済オンライン / 2024年11月15日 15時30分

しかし、住民が報奨金目当てでコブラを飼っていると知った政府は、報奨金を出すのをやめることにしました。すると住民はコブラを育てる動機がなくなり、かといって殺すのも面倒なので放置してしまい、逃げ出したコブラは大いに繁殖。お触れを出す前よりコブラが増えてしまいました。

このように、インセンティブは、設計した人が意図しない行動を引き起こす可能性があります。

ビジネスでも同様です。例えば「ドラフトで指名した選手が入団したら、ボーナス支給」という制度にすると、スカウトたちは欲しい選手の交渉を頑張るよりも、確実に入団する選手を指名するようになると想定されます。これがインセンティブ設計の難しさです。

また、一般的には仕事上の行動で「強制」を使って、人を動かすことは避けたいですよね。そんなときこそ、「ナッジ」の出番です。ナッジは比較的新しい理論ですが、昔からナッジに通じる知恵や工夫はありました。

例えば、一流ホテルや大企業でも男性用の小便器は汚れていることがあります。ここで、「壁に『一歩前に』と貼り紙をする」「床に足跡マークを描く」「便器の中に的(まと)シールを貼る」といったナッジがよく使われます。順に見ていきます。

そもそも「トイレをきれいに」と言われても、急いで用を足したい人にとって、何をすべきかよくわかりません。これに対し、「一歩前に」とはっきりと記載することで、その通りに行動しやすくなります(簡素化ナッジ)。

また、「床に足跡マーク」は、先ほど紹介した「スーパーのレジ前の足跡シール」と同じく、つい足を置きたくなります(規範ナッジ)。「的シール」はゲーム好きの特性に訴えかけたナッジです(ゲーム化ナッジ)。とくに射的が大好きな人は、的があると狙いたくなるものです。ただし、インセンティブと同様にナッジも設計次第では逆効果になることがあるので注意してください。

悪い方向の「同調バイアス」に要注意

たとえば、次のケースを見てみてください。

アメリカのアリゾナ州にある化石の森国立公園では、観光客による化石の持出しに悩まされていました。そこで公園当局は持出し防止の看板を設置しました。

看板1 「1人が化石を少しずつ取っていくと、年間14トンにもなります」
看板2 「化石を持ち出さないでください」

どちらの看板が、観光客に効果的だったかわかりますか?

実は看板1は、意図とはまったく逆の効果をもたらしました。看板なしの状態では観光客全体のうち3%の人が化石を持ち出していましたが、看板1を設置することで、持ち出す人は8%に増えたのです。反対に、看板2を設置すると2%に減りました。

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