英仏海峡の高速鉄道「ユーロスター」30年の軌跡 航空機を圧倒する国際列車、環境問題も追い風
東洋経済オンライン / 2024年11月15日 6時30分
ユーロスターが1994年に運行を始めて以来、30年の間にはさまざまな変化があったが、最も大きなインパクトがあったのは2007年、ロンドン側の発着駅がウォータールー駅からテムズ川を渡った中心部のセント・パンクラス駅に移ったことだろう。
これは英仏海峡トンネルの出口とロンドンとの間に、高速鉄道専用線「ハイスピード1(High Speed 1、HS1)」が開通したためで、これによってロンドンとフランス側トンネル出入り口間の所要時間が約20分短縮された。
セント・パンクラス駅は大改装が行われ、ユーロスター乗り入れのために出入国管理施設も新たに設けられた。同駅の東側には、スコットランド方面を結ぶ特急が走る東海岸線の発着駅、キングス・クロス駅がある。徒歩圏内には西海岸線の発着駅、ユーストン駅もあり、国内各地への乗り継ぎにも利便性が高い。
ウォータールー駅に発着していた当時は、イギリスへの入国手続きは列車の走行中に審査官がスタンプを持って車内を回るという「原始的」な方法で行われていたが、セント・パンクラス駅に移行後は、出発時に出国手続きだけでなく、目的国の入国手続きまで完了するという「プレ・クリアランス方式」を採用している。
ちなみに、大陸側トンネルの出口はフランス領にあるため、ベルギーやオランダに行く際にも、入国審査官が「ロンドンでフランスへの入国を許可」という奇妙なスタンプを捺してくれる。
車両は運行開始から二十数年を経た2015年、ドイツ・シーメンス製の最新型「e320」が導入された。
この車両はシーメンスの「ヴェラロ(Velaro)」と呼ばれるシリーズで、ドイツ鉄道の高速列車ICE3(407形)などと同タイプだ。最高時速は300kmで、車内には充電用プラグやWi-Fiが整備され、移動しながら仕事のできる環境が乗客に歓迎されている。
ユーロスターの長年の懸案は乗り入れ先の拡大、とくにフランス、ベルギー以外の欧州大陸諸国への乗り入れだった。パリ郊外のユーロ・ディズニーへの直行便や季節運行でフランスのスキーリゾートへの直行便などは運転していたが、2018年になってようやくロンドン―アムステルダム間の直通列車の運行が実現した(2024年6月から2025年初頭まで、オランダ側出入国施設改良の影響で運休中)。
現在、ロンドン―パリ間は最速2時間16分。同区間でのシェアは8割に達し、航空機より優位に立っている。
他社も参入狙う英仏海峡ルート
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