「会議資料はコピペ」平安貴族の呆れた"ぬるさ" 「庶民のための政治」をする気は全然なかった
東洋経済オンライン / 2024年11月16日 15時0分
また、日本の律令では、「令外官(りょうげのかん)」が多数存在します。これは律令に規定のない例外の官職のことです。
近衛少将や近衛中将、蔵人頭、参議や中納言、内大臣など日本では主要な官職の半分が令外官でした。律令は唐の政治・社会状況に合わせて作られたものですから、そのまま輸入しても日本の実情に合うわけがありません。そのため、さまざまな例外を設けて、無理矢理に日本社会に当てはめたのです。
平安時代よりも前の奈良時代には、4隻のうち1隻は沈んでしまうというようなリスクを取りながら、知的エリートらは大陸へ渡り、最先端の知を学びました。そうやって、日本に律令をもたらし、法に則(のっと)って、政治を行おうとしたはずです。日本では律令そのものを制定するだけでも、大掛かりな事業だったことでしょう。
しかし、律令を確立した当初は、実際にそれに即して政治が行われたとしても、時代が下ると、外敵もなく軍事的な衝突もなくなり緊張感のない時代に入りました。すると、律令も形骸化していきます。
特にひどい例は、地方行政の要である国司です。今で言うところの県知事にあたるようなポジションです。
最初は中央から地方へと赴任していた国司(任期は4年)ですが、時代が下るごとに、実際には地方に行かなくなります。家来を代理に立てて、代わりに政務を行わせるようになったのです。これを遥任(ようにん)と呼びます。
たとえば、紫式部の父・藤原為時は越前守に任命されています。そのため、為時は娘の紫式部をはじめ、一家を連れて越前国へと移住しました。藤原道長の時代にはかろうじて、地方官はきちんと現地へ行っていたのでしょう。しかし、それ以降はほとんど赴くことはせず、京都で暮らして、現地の仕事は他人に任せるようになってしまいました。
ここでも、平安時代というものが、いかにハリボテの時代であり、中身のない時代であったかがわかると思います。
革命が起きない「ぬるい」国の最高権力者・道長
こうして、平安時代の貴族政治は大きな変化もないまま、ぬるい政治が続きました。
文化史的には、平安中期・後期とは、『源氏物語』など仮名による文学が発達し、国風文化が花開いた、特筆すべき時代だったと言われます。しかし、それは裏を返せば、中国との関係を断ったことを意味します。
漢文をはじめとした外国の文化を学ぶことを放棄した結果、仮名が生まれたのだとすれば、どうでしょうか。ただ単に、文化・社会的な進歩がなくなったとも捉えられるのです。結局、ドメスティックな視点に終始して、皆が皆、国内に関心が固定されてしまった事態とも言えます。
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