「膀胱がん余命1年宣告」から開き直りがん共存記 尿が腎臓に逆流、まずは腎機能の回復を最優先
東洋経済オンライン / 2024年11月16日 9時40分
しばらくして妻が「私が毎日拝んでいるから大丈夫よ」と励ましの声をかけてくれ、娘は「症状がわかって対処法が明確になれば、それはそれでいいんじゃない」と現実を受け止めている様子だ。
入院時には2人も同行して医師から詳細を直接聞くという。それでいい。久しぶりに家族との一体感を味わうことができた。さあ、がんとの共存生活がいよいよ始まるぞ。
膀胱がんとは
膀胱がんは、膀胱にできるがんの総称で、9割以上は膀胱内部を覆う尿路上皮にできる尿路上皮がん。その他には扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどもある。
膀胱がんの患者数は全国で2万3185人(2020年)。男性1万7424人、女性5761人で男性患者が約3倍だ。死亡数は9598人(男性6388人、女性3210人)。
生存率(ネットサバイバル=がんのみが死因となる状況を仮定して計算=2014-2015年、5年生存率)膀胱がん全体62.6%、Ⅳ期(ステージ4)18.3%(国立がん研究センターのサイト参照)
治療の選択肢は?
膀胱がんⅣ期の一般的な治療法(肺に転移しているケースなど)
①薬物療法(抗がん剤治療)
2種類の抗がん剤を点滴で投与して行う治療法はゲムシタビン・シスプラチン(GC)療法が一般的だ。この2種類の抗がん剤を使用することで約50%にがんの縮小が見られ、約10%は消失との報告もある。ただし効果の持続期間は平均で10カ月程度で、平均生存期間は14カ月と報告されている(四国がんセンターのサイト参照)。
②薬物療法(免疫チェックポイント阻害薬)
さらに①で効果がある場合の維持療法として、また①で効果がない、再発した場合の次の療法として、免疫チェックポイント阻害薬を使用する。ひと言で言うと、免疫が、がん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)薬だ。
からだを異物から守る機構の司令塔とも言われる細胞集団のT細胞(白血球のうちリンパ球と呼ばれる細胞の一種)のアンテナやがん細胞のアンテナに作用して、免疫にブレーキがかかることを防ぐ。T細胞のアンテナにブレーキがかからないから、T細胞はがん細胞を攻撃することができる。ひところ話題となったオプジーボもこの阻害薬のひとつだ。
③薬物療法(抗体薬物複合体)
さらにパドセブ(エンホルツマブ べドチン)という薬を点滴で投与する治療法がある。①②で効果がなかったケースでは、かつては標準的な治療法がなかったが、2021年9月にパドセブが保険適用となった。
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