「膀胱がん余命1年宣告」から開き直りがん共存記 尿が腎臓に逆流、まずは腎機能の回復を最優先
東洋経済オンライン / 2024年11月16日 9時40分
パドセブの働きはこうだ。パドセブの抗体部分が、尿路上皮がん細胞の表面にあるネクチン-4と呼ばれるたんぱく質と結合。パドセブが、がん細胞の内部に入り込み、薬物が切り離される。切り離された薬物が、がん細胞の増殖を妨げ、がん細胞を死滅させるーー。
国際共同第Ⅲ相試験(EV-301試験)では、従来の化学療法群と比較して全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)で優位な延長効果が認められた。
従来の化学療法に比べても優位
それぞれの中央値は以下の通りだ。
OS:パドセブ(12.9カ月)/従来の化学療法(9.0カ月)
PFS:パドセブ(5.6カ月)/従来の化学療法(3.7カ月)
全奏効率(治療後に腫瘍が縮小または消失した割合)は、パドセブ群40.6%に対し、従来の化学療法は17.9%。
いずれもパドセブ群の優位性が明らかな結果である。
さらに、今年9月24日、アメリカ・ファイザーとパドセブの開発を進めているアステラス製薬は「パドセブと抗PD-1抗体キイトルーダの併用療法について、根治切除不能な尿路上皮がんに対する一次治療として、適応追加に関する承認を取得しました」と発表した。
このリリースの中で、パドセブとキイトルーダの併用療法群の有効性と安全性を、白金製剤を含む化学療法群と比較した第Ⅲ相EV-302試験のデータが紹介されている。
Ⅳ期の患者でも多彩な治療法の選択が可能
全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)それぞれの中央値は以下の通りだ。
OS:併用療法群(31.5カ月)/化学療法群(16.1カ月)
PFS:併用療法群(12.5カ月)/化学療法群(6.3カ月)
このようにⅣ期の患者でも多彩な治療法を選択することが可能になってきた。奏効率や生存期間も従来の化学療法に比べて延びている。
とはいえⅣ期の患者の前途が険しいことに変わりはない。5年生存率は18.3%と2割にも満たない。薬物療法が効いたとしても、はたしてどこまで余命を延ばせるか。個人差が大きく、全ての患者がハッピーエンドを迎えられるわけではない。
しかし、それは厳粛なる事実、運命として受け入れざるをえないだろう。次回は、腎機能回復の手術の様子を中心にお届けする。
※①~③においては、それぞれさまざまな副作用が起こる可能性があるので、治療の際は医師とよく相談してください。
山田 稔:ジャーナリスト
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