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"つながり"を取り戻せ、孤独を予防する居場所 深刻な孤立に陥る前にいかに孤独を防げるか

東洋経済オンライン / 2024年11月17日 8時0分

木造の民家に近隣住民が集まる。隣家には幼児と親が遊べる場も(写真:編集部撮影)

孤独死や陰謀論が社会問題化している。その背後にあるのが、日本社会で深刻化する個人の孤立だ。『週刊東洋経済』11月16日号の第1特集は「超・孤独社会」だ。身元保証ビジネスや熟年離婚、反ワク団体など、孤独が生み出す諸問題について、実例を交えながら掘り下げていく。

地域のぬくもりを復活

[文京区]こまじいのうち

東京都文京区の本駒込。朝、古い民家が立ち並ぶ一角から、にぎやかな声が響いていた。

「手も足もいうことを利かなくなってねえ。口は達者なんだけど」

「バジルソースにはニンニクよ。匂いはきついけど」

たわいのない会話に花を咲かせているのは、地域に暮らす70代から90代の女性たち。夫と死別するなどして、今は一人で暮らしている人がほとんどだ。

10時20分になると、スタッフが前に出た。「では始めましょう。今日もよろしくお願いします」。その日のプログラムは体操。手を上げ、足を揺らし、指を動かした。

NPO居場所コムが運営する「こまじいのうち」がオープンしたのは2013年。もともと下町の人情豊かな土地柄だったが、高度成長期に人口流入が加速し高層マンションが増えると、地域のコミュニケーションが希薄化した。

「昔のように、誰でも気軽に立ち寄れて、お茶でも飲みながら歓談できる場所があるといいなあ」。そんな地域の声を受け、空いていた部屋を提供したのが代表理事の秋元康雄さんだ。「地域のぬくもりを取り戻したかった」という。

秋元さんの取り組みは行政のニーズにもかなった。地域で暮らす高齢者たちの近況情報をいち早く捕捉できるからだ。いつも来ていた人が来なければ、すぐに異変に気づける。移動が困難になりつつある人は、社会福祉協議会と連携して介護保険サービスにつなげることができる。この日は体操だったが、スマホ教室やおしゃべりカフェ、こども食堂になる日もあり、多世代交流の場になっている。

課題の1つは、男性参加者を増やすこと。囲碁やマージャンの日は男性の割合が高まるが、それでも全体の男女比は3:7ほど。「企業の役職に就いていた男性ほど、なじむのに苦労する」(秋元さん)。誰でも気軽に立ち寄れる場所を、引き続き追求する。

自由価格制の自立した食堂

[世田谷区]タノバ食堂

孤独の予防を目指し、月に1度オープンする食堂がある。東京都世田谷区で2023年10月に始動した「タノバ食堂」だ。

9月下旬、色とりどりの夏野菜を使った手作り料理を囲んで、地域の住民たちが集まっていた。この日初めて食堂に参加した70代の女性は「これまでずっと働いていたから、町内会の人たちと関わりがなかった」と話す。食事を取り分けながら、自然と会話が弾む。

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