「セブン&アイ」創業家の巨額買収を実現する"秘策" 常識的には難しい巨額MBOの突破口を考える
東洋経済オンライン / 2024年11月17日 10時0分
そもそも市場が適正だと考えていたセブン&アイの企業価値は、買収が明らかになる前の4.6兆円の水準です。それをもし8兆円で買うことになれば以前からの株主にとっては何もしていないのに1.7倍に資産価値が増えることになります。この取引を取締役会が拒否し続けるのは正直、経済合理性としては難しいのです。
そこに今回の提案です。創業家がACT社と同規模の提案でこの買収に参戦するというのです。このニュースでセブン&アイの株価がさらに上昇します。この記事を書いている時点でセブン&アイの時価総額は6.4兆円まで上昇しました。この後、買収劇はどう展開するのかを市場が注目する状態になっています。
さて、そこでこの創業家によるMBOは実現するのでしょうか? 普通に考えるとこれは実に難しい問題をかかえた計画です。それを詳しく説明します。
報道によると、現段階では創業家側は資金調達について金融機関へ打診を始めた段階です。仮に一番低い価格の7兆円で買収が成立するとします。メガバンクがこの買収に資金を貸し付けることができるでしょうか?
普通に考えれば「まず無理」
普通に考えればこれはまず無理です。というのも、もともと4.6兆円の価値の企業を7兆円で買うための融資ですから、会社自体を担保にしても4.6兆円を超える部分は信用で貸すしかありません。
「日本の大切な企業を防衛するためだから」
という大義はありますし、
「さらに成長すればいずれ企業価値は7兆円に到達するから」
という説得もあると思いますが、今後金利が上がれば有利子負債は経営を圧迫します。つまりバンカーとしては融資はできないでしょう。
となるとファンドないしは事業会社が新たな株主として参加しなければ資金調達は成立しません。M&A用語でいう「白馬の騎士」の登場が期待されます。
ところがこのMBO、ファンドの立場でも株主として参加をするのは困難です。理由は単純で、出口として7兆円よりも高く株式を売れるメドがたたないからです。
今の創業家と経営陣の実力ではセブン&アイの企業価値は4.6兆円です。買収提案後、セブン&アイはお荷物のイトーヨーカドーの大量閉店や、スーパー事業全体を別会社として切り離す方針などを発表して、株価を上げてきましたが、やれているのはその程度です。今の経営方針に任せておいて時価総額が7兆円を超えていくのであれば、最初から株を買っておけばいいだけの話で、わざわざリスクをとってMBOに参加する意味が見いだせません。
「白馬の騎士」になりうるのは事業会社か
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