「久世福商店」展開企業、長野発製造小売りの強み ペンションで提供したジャムが創業のきっかけ
東洋経済オンライン / 2024年11月18日 7時30分
日本経済活性化の起爆剤として「中堅企業」への関心が高まっている。政府も2024年を「中堅企業元年」と銘打ち、法改正も行って支援態勢を整えた。『週刊東洋経済』11月23日号の第1特集は「すごい中堅企業100」だ。誰もが知る有名企業から意外なニッチトップ企業まで日本各地で飛躍している中堅企業の現状や、彼らを取り巻く環境の変化、注目企業ランキングなどをお届けする。
サンクゼール|上場(長野県飯綱町)
[業 種]食料品
[設 立]1982年
[代表者名]久世良太
[売上高]191億円(2024年3月期、連結)
[従業員数]265人(連結)
「久世福商店」のブランド名で和食材の小売店を国内に約160店展開するサンクゼール。燻製(くんせい)大根の漬物「いぶりがっこ」をあえたタルタルソースなど独自性の高い加工食品や各地の調味料が人気だ。長野県の飯綱町に本社を置く。
「自分たちで商品を作るだけでなく、売価も自分たちで決め、しっかり売れること」と久世良太社長が話すように、ビジネスの強みはこの分野には珍しいSPA(製造小売業)にある。商品の企画・開発から調達・製造までを自社と協力工場で完結できる。生産者約500社とネットワークを持ち、こだわりの食材を使った商品の開発が得意だ。
2022年12月に東京証券取引所グロース市場に上場。足元では、EC(ネット通販)や卸売りに加え、アメリカを中心に海外事業にも力を入れる。アメリカ小売り大手コストコ・ホールセール向けの売上高比率は10%を超える。
久世社長の父の良三氏(現会長)が斑尾高原で経営するペンションで宿泊客向けに出していた手作りジャムを商品化したところヒット。食品事業にシフトしたことが創業のきっかけだ。
1999年には軽井沢町に直営1号店を開き、小売り事業に乗り出す。最初のブランドは社名と同じ「サンクゼール」。祖業を引き継ぐ形でジャムやワインなど洋風の加工食品を扱い、現在は国内に13店舗を展開する。
2010年代に入り、事業の成長を模索する中で、和食の世界的なブームに商機を見いだす。和食がユネスコの無形文化遺産に登録された2013年、サンクゼールは「和のグロッサリーストア」をコンセプトに掲げ、久世福商店ブランドをスタート。今では屋台骨の事業に育った。
近年、サンクゼールを悩ませているのは製造コストの上昇だ。自社、仕入れ先ともに原材料費や人件費、エネルギー費は上がっており、コスト増を商品の価格に転嫁していかないと、仕入れ先の経営も立ち行かなくなる。
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