「サイコパス」の冷徹さは何らかの役に立つのか 「うまく機能しているサイコパス」に向いた仕事
東洋経済オンライン / 2024年11月19日 8時20分
過去10年間に、私は数人の元独裁者を調べ、会って話を聞いてきた。彼らはみな、常人とは違っていた。魅力的な人もいれば、奇妙で超然としている人もいた。全員が高慢だった。だが、誰もが共通のリスクを抱えてもいた。独裁者の地位にあるのは危険だ。
サダム・フセインも、ムアンマル・カダフィも、ニコラエ・チャウシェスクも、それを思い知らされた。
アメリカや日本やフランスでは、権力を失った指導者は、本を書いて販売促進のブックツアーに出る。政界の長老になる。裕福で、尊敬されながら、高齢で亡くなる。
だが、独裁者はそうはいかない。ほとんどの独裁者は、次の3つのうち、どれかのかたちで権力の座を去る。真夜中に国外への飛行機の片道切符を手に、あるいは手錠をされて、はたまた棺に納められて。私が数えてみると、権力を失ったアフリカの独裁者の半分近くが、国外に亡命するか、独房で衰弱するか、処刑されるかしていた。
こうした末路をたどるかどうかは、五分五分ということだ。ハイチではさらに分が悪く、大統領の3人に2人がそのような苛酷な運命をたどる。
とりわけ残虐な時期にハイチの大統領が政権に終止符を打たれた様子を順に挙げると、次のようになる。国外追放、国外追放、爆死、収監、国外追放、処刑、国外追放、そして、これが特に身の毛もよだつのだが、「怒り狂った暴徒にフランス公使館から引きずり出され、公使館を囲む鉄製のフェンスに串刺しにされ、八つ裂きにされた」。
そこで疑問が湧いてくる。そのような実状を知りながら、いったい誰が「やってみたい!」などと思うのか? あいにく、そう思う人がいる。ダークトライアドの特性を持つ人々だ。
彼らは、自分は特別だ、だから前任者たちを見舞ったリスクは自分には当てはまらない、と思い込んでいる。「あいつらは間抜けだったから八つ裂きにされた。だが、私は金輪際そんな目には遭わない」と。
そのうえ、独裁者は、ダークトライアドの頂点にいる人にとって、夢の仕事だ。マキャヴェリストのように権謀術数の限りを尽くし、ついには完全な支配権を獲得する機会が得られるからだ。
精神病質のおかげで、彼らは誰でも好き勝手に選んで虐待できるし、拷問さえもできる。そのうえ、ナルシシスティックな面にとってはなおさら嬉しいことに、彼らがそういう行為に及ぶ間、誰もが称賛してくれる。「ボス、今日は足の爪を引っぺがしたときが、とびきり見事でしたね」などと、部下がおべっかを使う。
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