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「絶望はない」ミャンマー人難民に35年間医療従事 カレン族の医師シンシア・マウンさんに聞く

東洋経済オンライン / 2024年11月19日 11時0分

大きな外科手術はタイの病院に頼みますが、リハビリはクリニックが担っています。山岳地帯に逃げたり、戦闘を続けたりする人が増えたため、マラリアや肺炎、HIVなどの感染も増えました。巡回チームの医療従事者が検問で逮捕される例もありました。

子どもや女性への悪影響が広がっています。多くの子どもが栄養失調となり、ジャングルでの出産も増えて衛生状況が悪化している。戦闘によるトラウマやメンタルへの悪影響も深刻です。

コロナ禍の試練と綱渡りの資金確保

――資金確保は綱渡りの連続とか。

民主化が進展した2010年代には逆に寄付が減りました。医療や教育はミャンマー政府の仕事であり問題は解決に向かいつつあるという認識が広がったためでしょう。支援やNGOの活動もタイ側からミャンマー本国へと大きくシフトしました。

メーソートにとどまったメータオ・クリニックは職員の給与を2割削減したり、緊急性のない診療科目やサービスを削減したりして対応せざるをえませんでした。支援は現在、一時期に比べ増えていますが、医療に対する需要は増えるばかりで、医療従事者の訓練も必要です。支援も短期のものが多い。2024年も9月以降の資金が不足し、必要な予算の75%から80%しか補えていません。

――新型コロナウイルス感染拡大は大変だったと聞く。

大きな試練でした。ワクチンはなかなか届かず、国境の封鎖で外来患者も大幅に減りました。年間約15万人にも上った来院者は2019年に9万人、2020年に6万人、2021年には3万人まで落ち込みました。

2022年は6.5万人、2023年は10.5万人に増加し、2024年はすでに12万人を超えています。もちろん患者の増加が喜ばしいわけではありません。クーデター後の混乱が影響しています。

――少数民族武装勢力「カレン民族同盟」(KNU)や反国軍勢力との関係は。

KNUをはじめとする少数民族グループとは緊密に連絡を取り合っていますが、医療ネットワークを維持するという観点で協力しています。国軍から抑圧された人々や医療関係者を守り、人権やヘルスシステムを向上させることに重点を置いています。

――日本人へのメッセージを。

日本人や日本政府のこれまでの支援に感謝しています。しかし、国軍による攻撃で人々は危機にさらされており、虐殺や人権侵害といった事態に国際社会は対応してほしいです。日本もその中に含まれます。

協力の形はさまざまです。緊急援助だけではなく、医療や教育システム、地域や市民社会の持続的な発展に寄与してほしいと願っています。とくに子どもと女性への支援を期待しています。

若者たちこそ希望

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