NTT、人手不足のバス路線をテクノロジーで救う 名古屋で実証開始、来年には首都圏でもテスト
東洋経済オンライン / 2024年11月20日 10時0分
NTTグループが自動運転事業の本格展開に向けて動き出した。2023年11月にアメリカのMay Mobilityに出資・独占販売権を獲得し、このほどNTT中央研修センタ(東京都調布市)に実証拠点を立ち上げた。同社は2030年代に自動運転事業全体で年間売上高1000億円以上を目指している。
【写真で見る】NTT東日本はティアフォーとマイクロバスタイプの車両で自動運転の実証実験を行っている
これまでNTTグループ各社は、それぞれにMaaSや自動運転の実証実験を重ねてきた。NTT東日本は成田市でローカル5Gを活用した遠隔型自動運転バスの実証を、NTT西日本は長久手市で自動運転の実証を行うなど、全国各地で取り組みを展開している。
今回の実証拠点の立ち上げは、これら分散していた知見を統合し、グループとしての自動運転戦略を本格化する節目となる。
自動運転の総合プロデューサーへ
NTTは自動運転ビジネスで3つの取り組みを行い、独自のポジションを狙う。
1つ目は自動運転システムのインテグレーターとしての役割を担うことだ。May Mobility、ティアフォー、Navya Mobilityなど複数の自動運転システムベンダーと協業し、地域のニーズに応じて最適なシステムを提供する。「地域ごとに交通課題は異なります。それぞれの特性に合わせた提案が重要です」とNTT アライアンス部門モビリティビジネス担当統括部長の清水邦彦氏は説明する。
2つ目は通信インフラの提供だ。自社の強みであるローカル5G技術を活用し、自動運転に不可欠な安定した遠隔監視環境の実現を目指す。特に重要なのが、一般の携帯電話回線が混雑する都市部での安定性確保だ。
3つ目はNTT東西が持つ地域との結びつきの活用だ。「すでに全国各地でAI運行バスや自転車シェアリングなどのモビリティサービスを展開しています。この経験と人材を活かし、自治体や交通事業者との連携を深めていきます」(清水氏)。
実用化は目前に
自動運転技術の実用化は、もはや技術的な課題というよりも、社会受容性の問題に移行している。May Mobilityは既にアメリカ・アリゾナ州で完全無人での運行を実施しており、ミシガン州でも近く開始予定だ。
日本でも制度面での整備は進んでいる。限られたシーンでドライバーが不要となる「レベル4」は法制度上で認められており、実用化に向けた環境は整いつつある。一方で、日本特有の課題も存在する。「アメリカは道路が広く、駐車車両を避ける際も対向車線をはみ出す必要がほとんどない。日本の道路事情に合わせた技術調整が必要です」とNTTで自動運転の研究開発に携わる市原孝浩氏は説明する。
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