斎藤氏への世論「批判から熱狂」に変わった"本質" 斎藤知事「告発→失職→復活」までの経緯(下)
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 17時30分
11月17日に投開票された兵庫県知事選は、斎藤元彦前知事が111万3911票を獲得して当選し、97万6637票を獲得した稲村和美前尼崎市長らを大きく引き離した。当初は稲村氏が圧倒的に優位とされ、ほとんどがその勝利を確信していた。
圧倒的に劣勢だった斎藤知事が、最終的に熱狂的な支持を受けて当選するほど世論をひっくり返せたのはなぜなのか。
徐々に作られていった「ストーリー」
不信任が決議されて、議会の解散も自身の辞職も選ばず、9月30日に失職した斎藤知事は、その翌日から駅立ちを行い、“1人の戦い”を始めた。初日に選んだJR須磨駅前は、3年前の知事選でも初日に立った思い出の場所のようだ。
後になって思えば、この頃から「ストーリー」が作られていたのかもしれない。孤立無援の斎藤知事に、無名の高校生が励ましの手紙を渡した。駅前に1人立っていると、初めはおずおずと、やがては笑顔で何人かが声をかけ始めた。
高齢者や子どもなども登場し、斎藤知事のイメージアップに貢献した。その様子が動画配信を通じて拡散され、ひたすら頭を下げる斎藤知事の映像が、「反省」の印象を強めていった。
一方で、反斎藤陣営の候補擁立は難航した。斎藤知事の再選を阻止するためには、統一候補を擁立することが必要だった。そこで尼崎市長時代に、市内から暴力団事務所を一掃した稲村和美氏の名前が上がった。
ところが自民党の市議から「リベラルカラーの稲村氏と政策が合わない」と反対意見が出たうえ、自民党県連が決定した「斎藤氏以外の候補を応援」の方針にも抵抗。一部は斎藤氏の支援に回った。
それでも告示日前には、稲村氏は斎藤氏に15ポイントほどの差を付けていた。この時、地元関係者数人に情勢を聞いたところ、いずれも「たぶん勝ちますよ」と呑気な回答が戻ってきた。だが危機は迫っていた。稲村氏の陣営には選挙に長けた人物がいなかったのである。SNS戦略では最初から、斎藤知事に敗北していた。
途中で選挙担当者が替えられたが、もう間に合わなかった。「稲村氏は外国人参政権に賛成だ」などのデマも流されたが、これへの対応も不十分だった。投票日直前に優劣は逆転。稲村氏の敗北の大部分は、”オウンゴール”によるものといえる。
作られるようになった「民主主義」
2013年に解禁されたネット選挙は、2024年に大きく変貌した。それは4月の衆院東京15区補選や7月の東京都知事選で見ることができる。ネットで注目された候補の演説には人が押しかけ、その様子を配信すれば、再生回数が稼げた。
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