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ジャパネット2代目に聞く「地方企業の生きる道」 通販に次ぐ柱としてスポーツ・地域創生に注力

東洋経済オンライン / 2024年11月22日 8時0分

──創業者からの事業承継もうまくいったように映ります。

通常は創業者が会長として組織に残ることが多いが、父は完全に私にバトンを渡してくれた。スタジアムの構想を最初に話したときも「やりすぎやろ」とは言われたが、その後はずっと応援してくれている。母も「失敗したらそれも旭人の実力なんだから」と後押ししてくれた。

事業承継の問題で思うのは、子どもにはさみを持たせたときに心配ですぐ取り上げる親なのか、取り上げずに見守る親なのか、ということ。後者なら会社に残っていても害は少ないと思う。父の場合は前者だという自覚が本人にあったのではないか。

「正しいことをする独裁」のほうがいい

──創業以来、非上場を貫いていますが、その理由は?

非上場を貫く、というより上場する理由がない。一般的にいわれる上場のメリットには知名度・信頼度の向上、資金調達、ガバナンス強化の3点があるが、長年のテレビ通販事業で知名度はある。資金調達も当面はデット(銀行借り入れや社債発行など)で賄える。

ガバナンスについては、月に1、2回しか来ない社外取締役に説明するためのパワーを使うよりも、自分たちが正しいと思うことに振り向けたい。あえて極端な言い方をすると「正しいことをする独裁」のほうが絶対にいいと思っている。

そのためにも私自身が会社を俯瞰できる存在であり続けなければいけないし、世間的に間違ったことを選択しないよう自分を律しているつもりだ。日々の会議でも社員が私と反対の意見を言える空気があるし、6対4くらいで自分のほうが正しいと思っても社員に譲ることがある。そのように自分を律していれば非上場でもガバナンスを心配する必要はない。

──従業員数約5000人、連結売上高2621億円と順調に成長していますが、今後の見通しは?

毎日8つくらいの事業部門と会議をするが、どの会議でも明るい話題が飛び交う。来年1月に開局するBS放送局「BS10」のチームからも面白いアイデアがどんどん出てくる。旅行事業も5年後には1000億円の大台というのが見えてきた。すべての事業が順調にいけば10年後、売上高が1兆円規模に達していてもおかしくない。

──中堅・中小企業の経営者からは人材不足を嘆く声も聞かれます。

優秀な人がいい仕事をするのは当たり前。思いがあれば、ポテンシャルを引き出すことによって人は必ず伸びる。その成長のための環境を整え、ヒントを置いておくことが会社の役割。ヒントを拾うか拾わないかは本人次第だ。

リスクを取ってでもやりきる

──中堅企業が社会に果たす役割をどう捉えていますか。

企業は存在している以上、誰かに必要とされている「強み」がある。その強みを信じて本気で磨き、いいと思ったことを、リスクを取ってでもやりきる。そんな中堅企業が増えれば、日本は必ず元気になると信じている。

このスタジアムシティも、絶対に成功させたいが、一方でダメなら終わりとも思っていない。仮に失敗してもほかの事業で成功すればよい。そういう機運が日本の中堅企業にもっと生まれなければいけない。親などから事業を承継した人もチャンスと思ってチャレンジしてほしい。

(聞き手:木皮透庸・劉 彥甫、構成:ライター 堀尾大悟)

堀尾 大悟:ライター

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