異質なモビリティ「Lean3」完成まで10年のワケ トヨタから独立「BEV環境」が変わりゆく中で
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 10時30分
筆者が谷中氏に最初に会ったのは今から11年前、スイス・ジュネーブショーのトヨタブースでのこと。i-ROADが、世界初公開されたときだ。現・リーンモビリティ代表の谷中氏は当時、トヨタ自動車でi-ROADや「C+pod」などの小型モビリティ開発を担当していたのである。
i-ROADがブース内の舞台を走行する様は、これまでのクルマや2輪車の常識を覆す雰囲気で、メディア関係者や一般来場者に極めて強いインパクトを与えたことを思い出す。
その後、i-ROADはヨーロッパなどで実証試験を行っており、筆者も豊田市のクローズドエリアで試走したこともある。後輪が駆動と操舵に対応するため、「小回りが効く」印象だった。
一方、リーンモビリティとして独立し、谷中氏が完成させたリーン3では、駆動は後輪だが操舵は前輪で行う設計になっている。
この点について谷中氏は、「後輪操舵による独特の操作感よりも、多くの人が操作しやすいと感じることを重視した」と説明する。
そのうえで、「どのような車両姿勢でも、タイヤがボディに接触しないような設計にするのが挑戦だった」と量産に向けた経緯を振り返った。あわせて、生産性やコストの効率化を考慮して、リーン3が完成した。
生産については、台湾の2輪メーカーである中華汽車と、車両最終組立の委託に向けた覚書を2024年10月に締結しており、2025年の販売を目指す。価格は、生産地の台湾で90万円台の想定だという。
なぜ、量産まで10年以上もかかったのか?
こうした経緯を見ていく中で、疑問が湧いてこないだろうか。i-ROADがコンセプトモデルとして登場してからリーン3の量産までに、「なぜ10年以上の年月が必要だったのか」という点だ。
i-ROADについてはトヨタの事業に関わるため、守秘義務を考慮して今回の取材時にも谷中氏に対してコメントは求めておらず、ここから先は筆者の私見として話を進めたい。
ジュネーブショー2013でのi-ROAD発表に際して、トヨタヨーロッパのディディア・レロイ社長(当時)は、トヨタが考える次世代モビリティの全体像をチャートで示した。
その中で、電動車の中核は当時、ヨーロッパ市場での販売拡大戦略を進めていた「プリウス」が起点となっており、そこから市場はPHEV(プラグインハイブリッド車)へと広がって、都市間移動など長距離対応ではFCEV(燃料電池車)を重視するとしていた。この流れは、2024年現在でも概ね変わっていない。
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