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異質なモビリティ「Lean3」完成まで10年のワケ トヨタから独立「BEV環境」が変わりゆく中で

東洋経済オンライン / 2024年11月22日 10時30分

現在との大きな違いは、BEVの位置付けである。当時のBEVは、一充電航続距離を100km程度とするシティコミューターとしていたのだ。

その中で、「iQ」をベースとした「eQ」を「ショートディスタンス・コミューター」、現在も生産が継続しているトヨタ(車体)の「コムス」を「ホームデリバリー・ビークル」、そしてi-ROADを「パーソナルモビリティ・ビークル」と区分していた。

その後、フォルクスワーゲンが燃費不正問題から事業のV字回復を狙い、他社に先んじて「BEVシフト」を宣言。同じころ、第21回 気候変動枠組条約締結国会議(COP21)で採択された「パリ協定」がきっかけとなり、自動車産業界において環境対応戦略の必要性が一気に高まった。

これを受けて、投資家の目がBEVに集まり、環境・ソーシャル(社会性)・ガバナンスを重視するESG投資の大波がグローバルで広がる。そして、いわゆる「BEVシフトバブル」が2010年代後半から2020年代前半にかけて、巻き起こる。

結果的にBEVは、HEV(ハイブリッド車)やガソリン車並み、またはそれ以上の航続距離を可能とする大容量バッテリー搭載車が主流となっていく。

実証は行われるも難しい事業性

小型電動車について日本では、国土交通省が2010年代に「超小型モビリティ」という車両区分の新設に向けて全国各地で実証実験を行った。

導入目的は、中山間地域での交通確保、いわゆる“買い物難民”と呼ばれる住宅地域での手軽な移動手段、観光地での回遊、そして個宅配達や自宅介護事業へのサポートカー等であった。

筆者も全国各地の実証現場や、超小型モビリティ関連の数多くのスタートアップを取材した。だが、実証時点での成功事例は少なく、その後の法整備の遅れや事業性の難しさなどを理由に、多くの事業者が超小型モビリティ事業から撤退していった。

最終的に、超小型モビリティの法整備は進んだものの、国内需要はあまり広がらず、この分野では国内でもっとも品質の高いと考えられていたトヨタ C+podも短命に終わることになる。

日本では一方で、電動キックボードが特定小型原付として新規に区分されたり、(賛否両論あるが)都市部の観光用としてゴーカートを使用したサービス事業が一般化したりと、環境は変わってきている。交通が不便な地域を対象としたライドシェアに対する法整備も、進んでいるところだ。

こうした中、2013年時点でトヨタが描いたi-ROAD普及に向けた将来図は、大幅に修正する必要が出てきたと言わざるを得ない。

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