うつで働けなくなり知った「ボードゲームの魅力」 ボードゲームは個人の属性も能力差も乗り越える
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 14時0分
「歌が下手だからカラオケに参加したくない」「いつもシュートを外してしまうからフットサルに参加しづらい」などといった苦手意識のある遊びが、誰にでもいくつかあるのではないでしょうか。ですが、ボードゲームには、遊んでいるとき「うまくできない」人がその場にいづらくならないゲームがたくさんあります。
自身が鬱から回復する中でボードゲームと出会った評論家・與那覇潤さんが、1996年からボードゲーム情報を掲載するブログTGiW(Table Games in the World)を更新している(2009年からは毎日更新)ボードゲームジャーナリスト・小野卓也さんとともに社会におけるボードゲームの価値について深く考えた共著『ボードゲームで社会が変わる』から抜粋して紹介します。
ゲームのルールに乗ってしまえばいい
與那覇 うつで働けなくなっての入院とデイケアがきっかけで、ボードゲームの面白さを知るというぼくのコースは、ちょっと珍しいのかもしれません。しかしおかげで「プレイする目的を設定しない」ことの他にもうひとつ、ボードゲームの魅力のゆえんに気づけたと思っています。それは、極言すれば「能力は要らない」ということです。
【画像でわかる】うつ状態の人同士でも「大喜利ができる」というボードゲーム
2015年の冬に、長いあいだ名作と呼ばれつつも、日本語版が未発売だった『私の世界の見方』(以下『見方』)が発売されましたね。メンバーさんが買ってデイケアに持ってきてくれたのですが、これは本当に、目から鱗が落ちる作品でした。
小野 ええ。カードで大喜利を再現するゲームなのですが、「ドイツ人が笑えるネタ」と「日本人が笑えるネタ」はだいぶ違うでしょう。日本語版を製作したテンデイズゲームズが「日本オリジナルのお題の公募」なども事前に行って、ボードゲームファンの間ではかなり話題になりました。
與那覇 『見方』のプレイヤーには、「ゲーム」のような単語が書かれた小さな手札が数枚配られます。その上で、親が「いま話題のベストセラー──『○○で社会が変わる』」といった、お題カードを読み上げる。親以外は、手札の中から〇〇に入れたら「面白いかな」と思うカードを伏せて出し、シャッフルする。その上で親に「これが一番面白い」として選ばれた人が得点するルールです。
うつ状態になると、病気の前は雄弁で社交的だった人でも、会話ができなくなります。まして元々話すことに苦手意識があった人だと、より一層「自分には『面白い話』なんてできない」という気持ちに追い込まれてしまう。だからうつの人どうしで「大喜利大会をやろうよ」といきなり言われても、普通はうまくいきません。
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