「人の脳年齢は1日眠らないだけで老化」は"真実" 「神経細胞は一度死んだら戻らない」は実はウソ
東洋経済オンライン / 2024年11月24日 15時30分
睡眠不足は、脳のいろいろな部分に、さまざまなダメージをもたらします。たとえば、
・ニューロンがぎっしり詰まっている灰白質(かいはくしつ)の体積減少20
・神経線維が密に通っている白質の広範囲にわたる(良くない)変化21
・大脳皮質の広範囲にわたるニューロンの(よくない)変化22
・脳室の拡大(=脳の萎縮)23
など、ニューロンやグリア細胞を含めて、睡眠不足は、脳の細胞にはロクなことがないようです。
これらの研究は、脳MRIを研究者が多大なエネルギーを傾けて解析したものです。MRI画像の解析なんて脳科学者にしかわからない、と思われるかもしれませんが、もしかしたらわたしたち自身が、自分の脳の老化を可視化できるようになるかもしれません。
睡眠不足で脳は老化する
「新しいものを覚えられない」「人の名前が出てこない」「とにかく話が長い」「すぐにカッとしてしまう」
これらの特徴は、悲しいかな脳の老化現象の表れです。
脳神経系のダメージを身近に感じさせる脳の老化ですが、人間の脳は一晩眠らないだけで、1~2歳老けることが、新しい研究で明らかになりました24。
チューリッヒ大学やハーバード大学など、欧米の合同研究チームは、「brainageR」という機械学習アルゴリズムを用いて、睡眠不足の人の脳MRIから「脳年齢」を推定し、同じ人の一晩中眠ったあとの脳MRIと比較しました。ちなみにbrainageRは公開されていて、約4年先の脳年齢を正確に予測できることが確かめられています。
結果は先述した通りで、一晩眠らなかった場合は、ちゃんと睡眠をとったときと比べて、平均で1~2歳老けていると、brainageRが推定しました。幸いなことに、この老化現象は一晩眠ったらなくなりました(※外部配信先ではグラフを閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
この研究では一晩の睡眠不足でしたが、継続的な睡眠不足による脳年齢の変化も、そのうちデータが発表されると思われます。おそらく結果は、一晩よりももっと老化が進むことになると予測されます。
睡眠不足は「孤独」にも関係する?
これからの人間の健康には、単に平均寿命が長いだけではなく、幸福感や満足度の高い生活、いわゆるウェルビーイングが、大きな課題です。孤独や社会的孤立は、喫煙や運動不足、飲酒よりも、死亡率やウェルビーイングに悪影響を及ぼします。
睡眠不足と孤独、社会的孤立の間には、双方向の関係があることが注目されています。
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