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ボードゲームが「能力格差」を乗り越えられる理由 ダイバーシティにつながるヒントがあった

東洋経済オンライン / 2024年11月24日 14時0分

2万人以上が参加し、にぎわった「ゲームマーケット 2023 春」の様子(写真:©︎ Game Market)

11月16日(土)、17日(日)に、幕張メッセにてゲームマーケット2024秋という、ボードゲームをはじめとするアナログゲームの祭典が行われました。今回も全国から2万人以上が集まり、大盛況だったこの祭典は、ここ数年のブームに伴い、規模を拡大してきました。

鬱から回復するなかでボードゲームに出会った評論家・與那覇潤さんと、ボードゲームジャーナリストの小野卓也さんは、ゲームの魅力について考えていくなかで、世界各国で老若男女に楽しまれるボードゲームには、ダイバーシティにつながるヒントがあると言います。

共著『ボードゲームで社会が変わる』から抜粋して紹介します。

多様な人たちが一緒に楽しめる場とは

與那覇 ボードゲームひとつをとっても「ダイバーシティ」(多様性)の観点が求められる時代ですが、ぼくは多様性のある社会をめざす上で、最後に残る困難は「メリトクラシー」(能力主義)だと考えています。性別や肌の色で「人を差別していい」と露骨に主張する人は、近日ではまずいませんが、しかし現に「能力で差別していること」は見過ごされがちですよね。そうでなければ、大学入試も入社試験もあり得ませんから。

【画像でわかる】ボードゲームで多様でバラバラな患者さんたちが「一緒にいられる」

小野 與那覇さんと知りあったのは、2018年にご著書『知性は死なない』(現在は文春文庫)を送っていただいたのがきっかけでした。同書でもまさにその観点から、ボードゲームが持つ価値を論じておられましたね。

與那覇 ええ。そう考え出す出発点は、やはり入院とデイケアの体験でした。一口にメンタルの病気と言っても、うつ状態では沈黙して誰とも会話しなくなる半面、躁状態ないし発達障害の場合は、むしろガンガン話しかけてまくし立てたりもします。両者のあいだで「うるさい!」といった衝突も起きがちで、病気の人どうし共感しあえるのかというと、そう簡単には行かないことも多い。

だけど誰かが「このゲーム、一緒にやりませんか?」と提示することで、それは変わるんです。会話が苦手な人は「カードはどう使うんですか」のように相談しやすいトピックができるし、話し過ぎる人も話題がゲームに集中するので、会話が嚙みあいやすくなります。そしてゲームに慣れた人は「今の一手、いいですね!」のように、自然な形でポジティブな声がけをすることができる。

小野 ボードゲームというツールが、多様でバラバラな患者さんたちに「一緒にいられる」体験を可能にすると。『知性は死なない』では、それを認知科学の「アフォーダンス」(Affordance:提供されること)の概念で説明されていたのが印象的でした。

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