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「がんで死んだウサギ」で知る主人の間違った愛情 「ニンジンが好物」「かよわい」の誤解が招く悲劇

東洋経済オンライン / 2024年11月24日 9時0分

「ウサギはさみしくなると死んでしまう」というのも、昔からまことしやかに語られています。

たしかに、ウサギは本来、群れで暮らしている社会性のある動物ですから、飼い主さんとのコミュニケーションをとる時間が不足すると、それがストレスになるようです。

ストレスだけが原因ではありませんが、ストレス、不正咬合、不適切な餌などいろいろな要因が重なって、消化管の働きが悪くなる「消化管うっ滞」という病気になることがあります。

消化管うっ滞も子宮がんと並んで死亡率が高い病気ですが、ストレスだけでウサギが死んでしまうわけではありません。統計的には、ウサギがほかの動物と比較して病気にかかりやすいことはいえません。

草食動物であるウサギは、仮に体に不調があっても、極力、異変をさとらせないように振る舞います。これは、弱っている姿を見せて、捕食者に襲われないようにするためです。

見た目では体調がわかりにくいので、症状がはっきりと出てくるときには、先ほど述べたような子宮がんや消化管うっ滞などの病気が末期まで進行しているということが多いのです。

そうやって亡くなったとき、日頃からあまり様子を見てあげていなかった飼い主さんは、「少しかまわないでいたら、突然死んでしまった。さみしくなったからではないか」と考えるのかもしれませんね。

ただ、ウサギもストレスは少ないに越したことはありません。飼い主さんは十分なコミュニケーションをとりながら、体や様子に異変はないか、日々しっかりと観察してあげましょう。

言葉で訴えることができない

動物は私たち人間と違って、頭が痛いとか、呼吸が苦しいとか、どうも食欲がないとか、体の不調を言葉で訴えることができません。

動物の死に直面したとき、飼い主さんや動物園・水族館の飼育員さんたちは、「なぜ死んでしまったのだろう」「なぜ不調に気づいてあげられなかったのだろう」「もっとできることはあったのではないか」といった複雑な思いを感じるものです。

大事なことは、ウサギにかぎらず、ペットを飼っているなら定期的に動物病院にかかり、獣医師による健康チェックを受けるということです。

それでも不幸にして動物が亡くなってしまった場合、ぼくの行っている病理解剖は、その動物の死に遺された数々の「なぜ」の答えを探します。言葉を発しなくても、死んだ動物の体の中には、彼らが必死に生きた証しとなる「メッセージ」が込められているのです。

病理解剖をすることで、その動物がどのような理由で亡くなったか、そのプロセスを知ることができます。

突然死んでしまったウサギも、病理解剖によって、「飼い主さんが気づかないうちに子宮がんができていて、それが全身の臓器に転移しており、そんな素振りは見せなかったけれど、すいぶんと苦しかったはず」――ということが判明することもあります。

教訓が後の動物を生かす

家族同然だったペットの死を受け入れるのはつらいことですが、せめて死の原因がわかれば、飼い主さんがペットの死を理解し、死に納得する助けとなります。

死の原因を理解・納得したら、それをきちんと教訓としたうえで、後の動物たちと接してあげてほしいと思います。

中村 進一:獣医師、獣医病理学専門家

大谷 智通:サイエンスライター、書籍編集者

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