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「ネットには匿名性も必要」と平野啓一郎が思う訳 メタバースでの「思いがけない差別」に教育的価値

東洋経済オンライン / 2024年11月25日 8時0分

さまざまな先端テクノロジーを作品のカギとして描いてきた平野啓一郎氏(撮影:今井康一)

2024年11月に公開された映画『本心』。近未来の日本を舞台に、最新技術を使って生前そっくりの母をバーチャルに”再生”させた息子が、ついに聞くことのできなかった母の「本心」を探ろうとする物語だ。

原作の著者の平野啓一郎氏は、これまでもさまざまな先端テクノロジーを作品のカギとして登場させている。サイバーパンクな世界観ではなく、メタバースやAI(人工知能)が「今ある日常」にどう溶け込んでいくのか、綿密に描いてきた。

そうした作品を書き続けてきた背景や、技術進化が人々の生活・内面に及ぼす影響について、平野氏の考えをじっくり聞いた。

※記事の内容は東洋経済のインタビュー動画「【作家・平野啓一郎】日常に溶け込むテクノロジーを描く理由/「裏アカ」「匿名性」が必要な場面もある/先端技術は人間存在を脅かすのか」から一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

――テクノロジーに興味を持ち始めたきっかけは?

【動画を見る】作家・平野啓一郎インタビュー 生成AIが人間存在を脅かすのか/ネット世界に「裏アカ」「匿名性」が必要な場面もある/日常に溶け込むテクノロジーを描き続ける理由

さかのぼると、自分が10代だった1980、1990年代は「SFブーム」で、未来の世界への想像がいろいろな方向に膨らんだ時代でした。核戦争で人類全滅みたいな破滅的なものもあれば、空飛ぶクルマみたいなものも。

ただ21世紀になると、そういう想像とは違った方向で社会が変わっていったように思います。僕自身もインターネットの登場前後を経験した世代なので、とくにネットがすごく世界を変えた実感があります。

小説はやっぱり、現実の世界に生きている人たちが読むものなので、(技術の進化で)実際に何が変わっていくのかをうまくつかんでいかないといけない。だから、今の世界で最も変化の激しいネット世界、テクノロジーには注目せざるをえないと思います。

文学に久々に与えられた「自由空間」

――とくに「メタバース」は、その概念が一般に浸透する以前から平野さんの作品に登場しています。

理由の1つには、小説の技術的な面が挙げられます。

(作家は)みんな、現実に拘束されない自由なイマジネーションの領域を確保したいと思っています。ずっと昔はそれが、例えば外国でした。外国に行ったことのある人がまだ多くないから、どんなことを書いても「そうなんだ」と思って読んでもらえるわけです。

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