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がん治療の現場に異変、深刻化する「医師の偏在」 「医師不足で手術待ち数カ月」の恐怖シナリオ

東洋経済オンライン / 2024年11月25日 7時10分

消化器外科を志す医師には、使命感が強く長時間勤務もいとわない覚悟を持つ人も多い。だが結婚し子を持つとなると、そうはいかない。初期研修で消化器外科を選んだものの、過酷さを目の当たりにし、緊急手術が少ない乳腺外科などを選ぶケースもあるという。

若手不足のシワ寄せは、手術を主導する40〜50代のベテラン医師に及ぶ。若手が担っていた夜の当番や緊急出勤を、ベテランが受け持つ事態に陥っているのだ。その結果、「将来を期待された40代の中堅指導医ですら、職場を去っている」(ある消化器外科医)。

産婦人科の状況も深刻

出産に24時間対応する産婦人科の状況も深刻だ。医師数は微増傾向にあるが、他科に比べ女性の比率が高く、産休・育休で欠員が生じやすい。地域によっては需要に対して体制が十分に整っていないところもある。

その一例が千葉県松戸市にある松戸市立総合医療センター。県内に9つある地域周産期母子医療センターの1つだ。松戸市や柏市、流山市などの東葛北部医療圏において、ほかの病院では扱いが難しいハイリスク分娩など、年間800件近くを受け入れる。

大都市に近いにもかかわらず、「地域の需要を満たせていない状況」(同院の藤村尚代周産期母子医療センター長)だ。分娩数に対し必要なNICU(新生児集中治療室)が足りない。

NICUを新たに設けるには、産婦人科の医師だけでなく、新生児医療を担当する複数の常勤医師の配置も必要だ。しかし新生児科医は数が少なく、NICUを新設することは難しい。

現在、産婦人科の常勤医師は9人。診療体制は逼迫しており、休暇も十分に取れていない状況だ。

藤村氏は懸念することがある。若手の育成だ。「若手は労働時間の制限によって経験する手術数が減り、学ぶチャンスが少なくなっている。医療の質を担保しながら働き方改革を推進するのは、正直難しい」。

少ない医師数で医療体制を充実させるには、医療機関の集約が必要だろう。しかし患者によっては医療機関までの距離が遠くなるなど、地域格差が広がる可能性も考慮しなければならない。

共働きの増加に対応

医師数の劇的な増加が見込めない中、必要なのは業務時間の短縮だ。これまで病状や手術などの説明は、患者やその家族の要望に応えて、夜に行うこともあった。しかし今後は、医師の労働時間内で行うことや主治医以外が行うことを、患者も受け入れる必要がある。

また各病院では若手確保のため、共働き世帯の増加に配慮した働き方の見直しを進めている。

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