中国で相次ぐ「無敵の人」政府が恐れる"爆発の芽" 豊かな頃から一変、経済不安が渦巻く社会に
東洋経済オンライン / 2024年11月25日 12時0分
中国で子どもが襲撃される事件が相次ぐ。容疑者はいずれも中高年の男性で、生活に困窮し自暴自棄になった中年の「社会的報復」という見方が少なくない。
氷河期世代の筆者は2010年代に中国に移住し、生まれて初めて「成長とはこういうものか」と実感すると同時に、経済的に豊かになると期待が持てれば人々は一党独裁も言論の制約も受け入れるのだと理解した。
だが、永遠に続くかに見えた中国経済の高揚感は急激にしぼみ、中国社会は日本のバブル崩壊後と似た空気が漂う。中国政府は、国民の暴発の芽をどの程度恐れているのだろうか。
不景気知らずだった国
筆者が新聞社を退職し、中国に長期留学したのは2010年9月のことだ。ほどなく中国の2桁成長は終わり、8%の「安定成長」が目標とされるようになった。
それを「成長鈍化」と報道する日本メディアもあったが、バブル崩壊後に大学に入り、就活に苦しみ、成人してからデフレしか経験してこなかった氷河期世代から見たら、中国はとんでもなく景気のいい国だった。
なにしろ物価上昇に合わせて、支給される手当や給料が増えるのだ。最初の数年は毎年あらゆる物価が上がることに衝撃を受けたが、それを上回るペースで収入が増えるので、「これが成長というものか」と感動した。
中国生活後半4年間は現地の大学に勤務していたが、給料は当初の2.5倍になった。大学から通知される前に、中国人の同僚らから「近隣の●●大学で給料が上がったらしいから、うちも上がるはず」「たぶん9月から1000元(約2万円)上がるよ」と教えられた。
日本は21世紀に入ってずっとデフレだった。筆者が学生時代に住んでいた東京・早稲田のアパートは今も存在し、当時より少し安い家賃で住人を募集している。
日本に旅行に来た中国人にその話をすると、「家賃や不動産の価格が上がらない世界が本当にあるとは思わなかった」と驚かれた。
不動産を買わないと損をする
物価が上がり続ける国で、不動産は真っ先にやるべき投資になる。1990年代にタダみたいな価格で不動産を手に入れた人たちは、その後の上昇で味をしめ、2軒目、3軒目と買えるだけ買った。
2013年、筆者の勤めていた大学でキャンパスが一部移転することになった。同僚の1人が移転先に建ったマンションを購入したので、同僚8人で遊びに行った。
それから2カ月後、8人のうち2人がそのマンションの別の部屋を購入したと聞いてびっくり仰天した。2人とも自分たちが住む家は別にあり、「田舎の親に住んでもらう」と話していた。
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