「現代人の不安」の根底にある「つながりのなさ」 「私」ばかりで「私たち」という視点に欠ける社会
東洋経済オンライン / 2024年11月26日 12時0分
僕は、このことが現代の混乱を招いているのだと思います。
日本も同じで、江戸時代までは、薩摩は薩摩、会津は会津でそれぞれの組織と文化があり、「日本」なんていうものは意識していなかったわけですからね。
「自己実現」や「自己責任」で失ったもの
1980年代頃から21世紀に入るまで、日本では、「自己実現」「自己責任」ということが問われ、科学技術は個人の能力を拡大するよう働きかけてきました。
その時代の中で日本人が失ったものは、社会性です。
食事ですら、1人で好きなものを、好きな時間に、好きな場所で、好きなように食べるのがいいだろうという感覚になり、それはみんなで食べるしがらみをなくしたいという動機から起こったことでもありました。
それは良いことだったのかもしれませんが、個人がバラバラになり、孤独になりました。そして今は、「競争」と「選別」と「集中投資」と言われています。自治体でも、大学でも、会社でもそうです。
これで「We=私たち」という視点を失って、「I=私」ばかりになってしまった。他人を押しのけてでも、自己実現を図ることのほうが重要だというわけです。
世界では、将来が不安になるようなことがたくさん起きています。政府もマスコミも、そればかり伝えて人々の不安を煽りました。だから、みんな自分の未来に対して投資をしなければと思ったり、保険をかけたりするのです。
ところが、政府がやっていることは、マイナンバー制度や保険制度など、全国一律の制度やシステムを作ることばかり。
それは、個人が制度やシステムと契約してできるもの、つまり「契約社会」であって、人間が集団でまとまって支えるというものではありません。
そこに、「私たち」という目線がない。だから、今の時代にはそぐわなくなっています。
将来の病気に対する不安なども、かつては、かかりつけの医師との対話によって解消することができました。しかし、病院も保健所も、効率化で統合合併してしまい、日本にはかかりつけの医師がいなくなりました。
心臓疾患は心臓医、内臓疾患は内科医、外傷は外科医とカルテで仕切られ、個人が持つ病歴や病態が総合的に評価されていないのです。だから、「私を診てくれるのは、いったい誰なんだろう?」という不安ができてしまう。
僕は、こういったことを、「私」ではなく、「私たち」という目線で改善していかなければいけないと思っています。
今の制度やシステムは、個人間の関係をすべて断ち切って、「あなたは、個人としてこんなに不安な将来を抱えています。だから制度にすがりなさい」と言ってくる。これは、ビジネスのやり方です。
地域特有の身体文化に目を向けよ
この記事に関連するニュース
-
「社員のために尽くす会社」だけが生き残る理由 優れたリーダーに必要な「私たち」という視点
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 11時0分
-
人間関係を支配する「3倍の法則」のすごさとは 脳のサイズが規定する集団の規模とその機能
東洋経済オンライン / 2024年11月18日 12時0分
-
SNSをやめられない人が知らない不都合な真実 「進化」という巨視的な視点がなぜ必要なのか
東洋経済オンライン / 2024年11月12日 12時0分
-
日本のタテ社会に「上の人」がいないと困る訳 人類の進化史に「リーダー」は存在しなかった
東洋経済オンライン / 2024年11月8日 11時0分
-
人間の脳は「150人以上の人」と仲良くなれない 現代社会における「進化のミスマッチ」の問題
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 12時0分
ランキング
-
1「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月26日 8時10分
-
2【新NISA】50~60代から投資を始めるのは遅い?…メガバンク出身YouTuberが月1,000円ずつ投資した3つの銘柄「たった2年」で驚きの結果
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月26日 9時15分
-
3激混み国道23号と1号を“直結” 桑名の川沿いを行く新道開通 たった720mでも「かなり便利じゃないかコレ…!?」
乗りものニュース / 2024年11月25日 7時42分
-
4「オレンジの吉野家」より「黒い吉野家」のほうが従業員の歩数が30%少ない…儲かる店舗の意外な秘密
プレジデントオンライン / 2024年11月26日 7時15分
-
5「会社がつらい」同期トップ入社の彼に起こった事 「発達障害グレーゾーン」の人たちの特徴とは?
東洋経済オンライン / 2024年11月26日 14時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください