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軍事のプロ解説「公開情報だけで分析する方法」 米露の情報機関も9割以上は公開情報を元に分析

東洋経済オンライン / 2024年11月26日 16時0分

アメリカやロシアのようなインテリジェンス大国の情報機関でさえ、9割以上はOSINTを元に情報分析を行っていると言われるほどです(写真:鈴/PIXTA)

情報はいくらでも入ってくる。だからこそ、情報をどのように見極め、理解し、まとめたらいいのかが難しい。

ロシア軍事・安全保障の専門、小泉悠さんによる「情報分析力」アップのための入門講義を3回にわたって紹介します。

(本稿は『情報分析力』から一部を抜粋・再構成したものです)

誰にでもできて、なおかつあらゆる情報分析の基礎となるのが公開情報インテリジェンス(OSINT)です。分析対象国で公表されている出版物(公刊資料)を材料とする情報分析です。

そんなものを見ているだけで情報分析ができるの?と思われるかもしれません。もちろん限界も多いのですが、OSINTは意外と有用です。アメリカやロシアのようなインテリジェンス大国の情報機関でさえ、9割以上はOSINTを元に情報分析を行っていると言われるほどです。

なぜ公刊資料を読むのか――隠しきれない情報

新聞やテレビで報じられているような当たり前のことが、どうして情報分析の手段になるのでしょうか。特にロシアや中国や北朝鮮のような国のメディアに書いてあることなど、そもそも信用できないんじゃないか。こんな疑問もあるでしょう。

実際、メディアに書いてあることを鵜吞みにするわけにはいきません。第二次世界大戦中、日本の戦争指導機関である大本営は苦しい戦局を隠すために景気のいい発表ばかりしました。信用できない公式発表のことを「大本営発表」と表現するのはこのためです。

大本営発表のウォッチ、つまりOSINTには、それでも意味があります。その理由の第1は、情報にはどうしても隠しておけないものがある、ということです。

よく噓八百の代名詞みたいに言われる大本営発表ですが、実際には全くの噓ばかり書いてあったわけではありません。勝っているときには戦意高揚のために大々的に事実を公表しますし、負けているなら負けているなりに、ある程度はその事実を認めないと誰も政府を信用しなくなってしまいます。なにしろ連日のように日本本土が空襲を受けていたわけですから、これで「連戦連勝」というのは無理があるというものです。

問題はその「ある程度の事実」をどうやって深読みするかなのです。

情報の傾向の変化を見る

第2に、個々の情報はアテにならないとしても、その傾向の変化を見るというアプローチがありえます。

現在のウクライナ戦争を例に取りましょう。ウクライナとロシアの参謀本部は双方とも戦況を定期的に報告しています。これらの公式発表をずっと追っていくと、「最近になって戦果の報告が増えている。本当にこれだけ勝っているかどうかは別として、戦線での戦闘が激しくなっているらしい」ということがわかったりするわけです。

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