次の狙いは「中東」?欧州鉄道メーカー最新事情 水素車両は一段落、目立つ新車の「納期遅れ」
東洋経済オンライン / 2024年11月27日 6時30分
チェコ鉄道向けの特急用客車「ヴェクトレイン」も展示された。シーメンスはオーストリアの優等列車「レイルジェット」の新型(2024年4月6日付記事『オーストリア鉄道「新型レイルジェット」の大進化』参照)を製造しているが、このチェコ向け客車は、旧型レイルジェットと同じ旧世代の客車プラットフォーム(ヴィアッジョ・プラットフォーム)を採用し、運転台付き制御客車の前面デザインだけを機関車(ヴェクトロン)に合わせて変更している。
前面デザインの変更は旧型レイルジェットの前面構体が現行の安全基準(TSI等)に適合しないことが理由だ。同車は暫定的な営業を開始しており、まもなく本格的な営業を開始する予定だ。
新型TGV難航で精彩欠くアルストム
アルストムは、フランスの高速列車「TGV-M」として導入が計画されている、最新の「アヴェリア・ホライズン」が展示されると思いきや、結局今回も展示されることはなかった。アヴェリア・ホライズンは試運転が続いているものの結果が思わしくなく、すでに納期の遅延が報じられており、展示できる状態にはないようだ。既存のTGV規格から大幅な変更を加え、旧世代との互換性をあえてなくしたが、この決断ははたして吉と出るか凶と出るか。
そんな状況もあり、同社の出展は2階建て連接電車「コラディアMAX」と、旧ボンバルディア由来の「TRAXX3」機関車、そしてベルリン市向け低床トラムといったラインナップにとどまった。過去数回は水素燃料車両をいち早く展示発表し、ドイツではすでに営業運転を開始したものの、故障続きでまともに走らないという状況から、今回は展示がなかった。
その一方で、大手メーカーの隙を突いて相変わらず元気がよかったのがスイスのシュタドラーだ。大量の車両を展示したが、中でもとくに注目されるのはバッテリーおよび水素燃料を動力源とする「RS ZERO」と、イギリス向けの99型(Class 99)機関車だ。
RS ZEROは、シュタドラーの地方路線用ディーゼルカー「レギオシャトル」の後継として位置付けられているようで、バッテリーもしくは水素燃料のいずれかを動力源として選択できる。当初は既存のレギオシャトルを改良することも検討されていたが、バッテリーや水素燃料搭載のためのスペースを生み出すことが難しく、またTSIの最新基準に準拠させるため、完全新規設計となった。最高速度は動力源を問わず時速120km。バッテリーを選択した場合、屋根上にパンタグラフが搭載され、起終点で架線から電気を取り入れて充電する仕組みとなっている。
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