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超展開ドラマ「ゼンケツ」はヒットの要素しかない SNSが沸きまくる"仕掛け"が散りばめられている

東洋経済オンライン / 2024年11月27日 14時0分

もしかしたら、進化したテクノロジーを持った人間が神殺しを目論んでいるのではないか。事態は大それた「神殺し」の物語へと転がっていきそうなのだ。スケールがでかい。

社会問題も含んだエンターテインメント

主演の藤原竜也は2000年代に大ヒットした漫画原作の実写映画『デスノート』で、人間ながら「新世界の神になる」と宣言する夜神月を演じていた。

『ゼンケツ』での藤原竜也は、逆に人間にとって代わられそうになっている神様を演じているのである。

『デスノート』然り、人間が進化を遂げて不可侵な領域にまで迫っていくことの是非を問う物語は古くから存在する。

例えば、AIが人間を凌駕してしまいそうな2045年にはシンギュラリティ(AIが人間の知性を上回るという仮説)が起こると言われる今、この手のテーマは以前にも増して誰もの身近な問題になってきている。

『ゼンケツ』は一見、マニア受けのオカルトミステリーだが、よくよく味わってみれば、大ヒットドラマに成り得る、社会問題も含んだエンターテインメントなのである。

怪奇現象や怪奇事件というものが、実は人間の仕業であるという物語も珍しくはなく、代表格に『トリック』シリーズ(テレビ朝日系、2000〜2014年)がある。

種も仕掛けもあるマジックを生業とする主人公と物理学の教授がコンビを組んで、不思議現象を理路整然と解き明かしていく。『ゼンケツ』もその路線と思わせて、特殊能力を持つ神様が転生し続けているという科学では解明できない、宇宙的に大きなスケールになりそうな気配を漂わせる。

さらに、この手のヒットドラマの先行作には『SPEC』シリーズ(TBS系、2010〜2013年)もある。よくある刑事ものと思わせて、じょじょに超能力バトルものになっていくが、そこにも社会問題が忍ばされていた。

『光る君へ』とリンクする?

『トリック』『SPEC』『デスノート』『聖☆おにいさん』『ブラッシュアップライフ』等々……視聴者を熱狂させるヒットエンタメの要素を見事に盛り込みながら、新たなドラマを作りあげたのは、脚本の黒岩勉である。

『グランメゾン東京』『TOKYO MER~走る緊急救命室~』『マイファミリー』『ラストマン-全盲の捜査官-』『キングダム』『ゴールデンカムイ』など、原作もの、オリジナル問わず、近年ヒット作を連発している。アニメでは『ONE PIECE』の脚本も書いていて幅広い。

社会的なテーマ、心理的な駆け引きの機微、次々と転がっていくストーリー、あの手この手で視聴者を飽きさせない技があり、スケールの大きなエンタメも得意なうえ、緻密なミステリーも得意と、現代人が求めるものを熟知している。

『ゼンケツ』も、先述した、登場人物が次々と神であることが明かされる展開は小気味よかったし、序盤、ヒルコではないかと疑われていた謎の巫女(福本莉子)がじつはゼンケツのメンバーだったという展開も巧いなあと感心した。

最終回までまだまだ意外な展開が仕掛けられているのではないだろうか。ユースケ・サンタマリア演じる警部・荒波健吾は陰陽師安倍晴明の子孫ではないのか(大河ドラマ『光る君へ』でユースケは安倍晴明を演じていた)、気になることはたくさん残っている。

地上波放送の視聴率はさほど高くないものの(当初、視聴率が各メディアで発表されず、タイトルどおり異常事態かと思わせたこともあった。それが狙いだったのか関係ないのか定かではない)、TVerやNetflixでは常に10位内にランクインしていることでも、『ゼンケツ』の存在は無視できない。

木俣 冬:コラムニスト

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