「東京メトロが運営」ロンドンの鉄道、何が変わる? 時間の正確さに期待感「日本流」は打ち出せるか
東洋経済オンライン / 2024年11月28日 6時30分
独自色が強いのは大衆紙のデイリー・メール(Daily Mail)だ。同紙は冒頭で、日本の通勤ラッシュで以前よく見られた、乗客を車両に押し込む「押し屋」を「oshiya」と紹介。その後、日本の鉄道技術への期待を膨らませ、「エリザベス線が東京の鉄道スタイルへと刷新」「日本のノウハウが来たら、ついにロンドンの電車も定刻で走るようになる!」というファンタジーに近い展望を長文で語っている。
一方、オンライン新聞のインディペンデント(The Independent)は、交通アナリストのサイモン・コルダー氏の談話を掲載し、「アジアの大きなパートナーを含む現在のコンソーシアム(MTR)から、GTSへの運営移管が通勤者に大きな改善をもたらすとは言い難い」と指摘。とくに、ロンドン西部の老朽化した線路や信号など、地上区間のインフラが多くの問題の原因となっているため、東京メトロを含むGTSの参画による劇的な変化は期待しにくいとの見方を示している。
各紙の論調は多様だが、共通するのは東京メトロ参画への高い関心である。期待と懐疑の間で揺れるイギリス鉄道界の現状が、今回の案件に対する興味の高まりを起こしていると言えるだろう。
しかし、イギリスの鉄道界に「日本の鉄道文化」という新たな風を吹き込むほどの大きな変化が生じるかというと、イギリス各紙がもろ手を上げている状況でも筆者は懐疑的である。
その理由の1つは、今回の出資比率だ。東京メトロと住友商事の出資比率は合計で35%にとどまり、残り65%を占めるゴーアヘッドの持つイギリスでの地方鉄道や首都圏鉄道の豊富な経験に比べれば、影響力は限定的と言える。コンセッション方式による運営権の運営手法を学ぶ機会となるに留まる可能性もある。
それでも、過去には少ない出資比率ながらも巧みなブランディングで利用者の注目を集めた例がある。
たとえば航空会社も展開するヴァージン・グループは、かつて東海岸線の長距離列車運行事業に少数株主として関与し、「ヴァージン・トレインズ・イースト・コースト」というブランド名を掲げた。これは、広く認知された「ヴァージン」の名称を活用したほうがブランディングに優れると他の出資者も判断したためである。
また、同社は日立製作所製の新型都市間高速列車に「Azuma(あずま)」と日本風の名前を付けた。これは東海岸線(東=あずま)を走ることにちなみ命名したものだ。お披露目にはヴァージン・グループ総帥のリチャード・ブランソン氏も出席し、注目を集めた。
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