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ソニーが「KADOKAWA買収」で直面する3つの難題 クセの強い2社がタッグを組むのは簡単でない

東洋経済オンライン / 2024年11月29日 7時30分

ソニーも今年に入ってからだけでも多くの買収案件で買い手として名前が挙がったが、主に価格を理由として買収を断念している。

電子コミック配信サイトの「めちゃコミック」を手がけるインフォコムの買収案件ではソニーが買い手候補の1社だったが、最終的にアメリカの投資ファンド、ブラックストーンが約2800億円で買収した。

アメリカの映画大手パラマウント社の買収合戦にもソニーは名乗りを上げたが、最終的に価格などの条件面で折り合わず買収を断念した。ソニーの十時社長は「パラマウントという企業はかなり大きい。リスクや経営資源の配分の観点からフィットがよくない」と8月の決算説明会で語った。

買収のメリットに照らしてソニーが「適正」と考える水準から外れれば、株式の取得を断念する可能性もある。価格の面で折り合いをつけられるかが2つ目のハードルだ。

買収後に待ち受ける課題

3つ目のハードルは、株式の取得後にやってくる。ソニーはこれまでライトノベルやマンガなど、アニメ原作の版権を持つ大手の出版社と協力する形で、ヒット作を生み出してきた。

とくにアニプレックスが製作を手がけて劇場版アニメ作品が大ヒットした「鬼滅の刃」の版権を持つ集英社とは、蜜月関係にある。2022年には集英社とアニプレックスなどが出資してJOENという制作会社を立ち上げたほどだ。

しかし、ソニーとKADOKAWAが仮に一体となれば、こうした連携は従来通りとはいかなくなる。すでに海外向けのアニメ配信プラットフォームと、有力な製作会社やスタジオを掌握する「ソニー一強」を警戒する声はコンテンツ業界の中で高まっている。

「業界への影響は大きい。ソニーと大手出版社の関係が変わったり、業界内で合従連衡が進んだりする可能性がある」(マッコーリーキャピタル証券の山科拓アナリスト)との指摘もある。

これまでに築いてきた信頼関係を維持しつつ、KADOKAWAの持つアセットの価値を最大限引き出すためには、今まで以上に高度なバランス感覚が必要になるだろう。

シナジーを見通しづらい事業と、どう決着をつけるのかも大きな課題だ。KADOKAWAは2014年にドワンゴと経営統合し、それぞれの個性ある創業家、創業者が肝煎りで育ててきた事業を展開する。ゲームやアニメ以外に書籍出版、映画、ニコニコ動画関連サービス、教育事業のN高など、多岐にわたる事業を手がけるメディア・コングロマリットだ。

これらすべてをグループ内に残すのか、MBO(経営陣による買収)などを活用して外部化していくのかについても判断が求められる。

KADOKAWAは11月20日にプレスリリースで提案を受けていることを認めたものの、ソニーは一貫して「ノーコメント」(広報部)との態度を貫いている。多くの壁を乗り越え、めでたくゴールインすることができるだろうか。

梅垣 勇人:東洋経済 記者

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