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元テレ東・佐久間宣行への「人生相談本」が相次ぐ訳 地に足ついた"仕事術"が評価される納得理由

東洋経済オンライン / 2024年11月29日 8時30分

サラリーマンとして評価を残して独立し、フリーランスとしても実績を更新し続ける佐久間は、キャリアステップの成功例としても理想的な人物だ。

転職社会におけるキャリア形成は、多くのはたらく人にとって迷いの種。このまま今の会社にいていいのか、独立もアリなのか、はたまた転職か……。誰しも一度は頭をよぎったことのあるこの問いに対して、佐久間はこう諭す。

“頭を使わず衝動的に会社を辞めた人が、納得のいくキャリアを築けることはほとんどない。感情的になってしまうと、ものの見方が「短期的」で「短絡的」になるからだろう。大事な決断をするとき大切なのは、感情的にならないこと。”

出典:『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』佐久間宣行、ダイヤモンド社

書かれているのは転職や独立そのものの是非ではない。「ここではないどこか」に甘い理想を抱き、衝動的に決断するのは危ういと彼は告げる。佐久間自身が、約22年組織で勤め上げて40代で独立した周到な“準備の人”なのだから、この答えには納得だ。

実際、現在フリーランスである佐久間の活躍を見ても、会社員時代に積み上げたテレビ東京との厚い信頼関係を感じる。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』といった在局時からの担当番組の続投がそれを表しているどころか、同局との仕事はむしろ増えている。

昨年からスタートしたレギュラー番組『伊集院光&佐久間宣行の勝手に「テレ東批評」』がその1つ。他にも今年5月度にギャラクシー賞を受賞したバラエティ特別番組『日本怪奇ルポルタージュ』のMCや、毎年生中継される「隅田川花火大会」裏生配信の2年連続司会など、出役としての仕事もしばしば。テレ東にとって今や佐久間は、頼れるビジネスパートナーなのだろう。

会社員として長年勤め、組織で実績を築いた彼だからこそ、現在のフリーランスとしての華々しいキャリアにもつながっている。悩み相談に対する数々の回答も、彼の生きざまと並べて見て矛盾がないからこそ信用されているのだ。

原点は「誰でもできる仕事」だった

そんな佐久間にも、モヤモヤしながら過ごした若手時代はあった。入社1年目、深夜ドラマのADを担当していた頃は「つまらない上に激務」な仕事に対して、モチベーションを見出せずにいたという。

転機となったのは、撮影の小道具として必要な弁当作りの仕事。佐久間は監督からの無茶ぶりに不満を抱きながらも、ドラマの設定通り「サッカー部の女子マネージャーが、先輩にあげるお弁当」をリアルに作るべく、自分なりのアイデアを盛り込んで徹夜で弁当作りにはげんだ。

翌朝、その弁当のクオリティを見た監督は感動し、弁当をメインにしたストーリーに変更したという。「誰でもできる仕事」が「自分だけの仕事」に変わった、この出来事を境に仕事が楽しくなったと佐久間は語っている。

そんな彼の原点を踏まえて今日の人気を考えると、背筋が伸びるようだ。佐久間の語る仕事術は、世の社会人にプロとしてあるべき姿勢を教えてくれる。

白川 穂先:エンタメコラムニスト/文筆家

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