「骨を強めるにはカルシウム」の常識が変わった訳 メカニズムの解明で医学のガイドラインも改訂された
東洋経済オンライン / 2024年11月30日 16時30分
「強い骨」とは何でしょうか。「骨密度」や「カルシウム」が頭に浮かぶかもしれませんが、それだけが決定打ではありません。
骨が衰え、もろくなる「骨粗しょう症」をはじめ骨代謝の診断・研究・治療の世界的権威が、100年健康に生きるための骨の真実を明かした『100年骨』より一部抜粋、再構成してお届けします。
「骨の強さ」を決める2つの要素
2022年2月、「骨」にまつわる興味深いニュースが科学専門誌に掲載されました。
「呼吸器に疾患があったことを示す証拠を骨に残す恐竜の化石が見つかった」という驚くべき論文が有名学術誌「Scientific Reports」に発表されたというのです。恐竜が生きていたジュラ紀は、今からおよそ1億5000万年も前のこと。そんな気の遠くなるようなときを超えて、骨は自分のからだに起きた異変を後世に伝えたということでしょうか。
すべての臓器を包み、支えている骨は、私たちヒトを含む脊椎動物が生きて、活動していく上で最も重要な屋台骨。強く、太く、頑丈で長持ちしてほしいと願います。
しかしながら、そもそも“強い骨”とはどんな骨なのかを知っている人は、残念ながら少数派と言えるでしょう。まして、健康長寿の要である、骨の健康を守るための知識は、ほとんど知られていません。
骨、と聞くと真っ先に「カルシウム」「骨密度」という言葉が思い浮かぶ方も多いでしょう。実際、骨の体積の約半分はカルシウムやリンを主体とするミネラル成分でできています。でも、骨の成分はカルシウムだけではありません。残りの半分は、タンパク質の一種であるコラーゲンです。
「硬い骨の半分がコラーゲンでできている?」と多くの方は驚かれますが、骨の中でコラーゲンはとても大切な役目を担っています。
2010年「骨質」が骨の強さにかかわると解明
骨の構造を理解してもらうために、私はよく、鉄筋コンクリートの建物にたとえてお話しします。
コンクリートに相当するのがカルシウムで、鉄筋はコラーゲンにあたります。通常、鉄筋コンクリート製の建物は大きな地震が来ても簡単には崩れ落ちませんが、これは鉄筋がしなって、地震の衝撃を吸収してくれるおかげです。
骨も同様で、カルシウムなどのミネラル成分とコラーゲンの分子が粘り強くつながり合うことで、骨の強度を保っています。
骨に存在する無数のコラーゲン分子は、棒状のタンパク質です。建物でいうところの鉄筋1本がコラーゲン分子1本で、「架橋」(かきょう)と呼ばれるものが「梁」(はり)の役割を果たして、隣り合う鉄筋同士(コラーゲン同士)をつなぎとめています。
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