ドラッグストア成長鈍化、勝ち組の分かれ目は? あらゆるコスト上昇で利益確保が難しい状況に
東洋経済オンライン / 2024年11月30日 7時40分
ただし、これらの改革をいつ、どの程度まで進捗させるのか、具体的な行程は示されていない。他社と差別化するサービスを保ちながらどう効率化を進めるのか、ウエルシアは難題に直面している。
普通の安さで、ディスカウント戦略から転換?
一方、大幅増益となったのが九州を地盤にするコスモス薬品だ。売上高構成比の約6割を食品が占める「食品強化型」の代表格で、5年前から東京にも出店攻勢をかけている。
同社は年間100店舗以上の大量出店など規模拡大を背景に、仕入れの原価を低く抑えてきた。前期はディスカウント戦略をさらに強化し、圧倒的な安さでアピールしていた。
しかし、今年5月以降は利益率を以前の水準に戻し、食品などの店頭価格を引き上げた。これが増益の主な要因だ。
直近の決算を見ると、売上総利益(粗利益)の改善が目立つ。2024年6~8月期の粗利益は545億円。粗利率は20.8%だ。前年同期比で75億円増、率にして同1.4%の上昇となった。
「昨年はインフレの入り口に立っているという認識で、原価の改善分以上に粗利益率を低くして安く商品を販売してきた。今年はインフレ分の価格上昇を許容している。昨年が異常に安かっただけで、今年は『ふつうの安さ』に戻している」(柴田太取締役)
普通の安さといっても、他店と比べた優位性は失われていない。東京・八王子市の店舗を訪れたところ、プライベートブランド(PB)食品の価格は、骨を取り除いた冷凍さばの生姜煮が2切れ入りで税込み298円、冷凍の羽根つき餃子は税込み178円、3パックの納豆は税込み68円など、スーパーやコンビニと比べてもまだ安い。
とはいえ、店頭価格が上昇すれば客離れも生じる。プラス基調だった既存店売上高は、今年7月に前年同月比2.1%減と久々のマイナスとなり、9月は同4.2%減、10月も1.8%減と前年割れとなる月も出てきた。
同社は今期も大量出店を続け、増収増益を達成する計画だが、既存店の成長は最も重要な要素の1つ。規模拡大とのバランスが問われそうだ。
このほか、増収増益のツルハHDも、今期は65店の新規出店と同時に、78店舗の閉店を進める。今年6~8月期は20出店の一方で30店を閉鎖するなど、不採算店の閉鎖も並行して行う質重視の方針だ。
同社はPB商品で工夫をこらしている。大手メーカーと共同で「謎味」のポテトチップス(カルビー)やカップラーメン(エースコック)を販売。独自性の強い商品を打ち出し、SNSでも注目を集めている。
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