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31歳、4回転職した彼が「秋田でマタギ」になった訳 挫折の末にマタギという生き方にたどり着くまで

東洋経済オンライン / 2024年11月30日 11時30分

山の中の道なき道を行く「藪漕ぎ」中の岡本健太郎さん(写真:ご本人提供)

伝統的な狩猟法と山岳信仰を持つ、狩猟の民「マタギ」。

【写真を見る】ようやく会えた…「伝説のマタギ」91歳の“現在の姿”と、クマを授かった岡本健太郎さん

その発祥の地といわれる秋田県北秋田市・大阿仁(おおあに)地区で、今月11月1日にクマ狩りが解禁された。

2022年に神奈川県相模原市からこの地に移住して、マタギの後継者になるため修行中のフリーランスのデータエンジニア、岡本健太郎さん(31歳)も銃を担いで、師匠である伊藤優さん(74歳)や先輩マタギたち数人とともに山に入る。

猟期は2月15日まであるが、冬眠に入る前のクマを狙えるのはこの時期だけ。岡本さんは平日の仕事を週3日に詰め込んで、残り4日間はひたすら山を歩き、森の王者ツキノワグマを追い求める。

【写真を見る】ようやく会えた…「伝説のマタギ」91歳の“現在の姿”と、クマを授かった岡本健太郎さん(6枚)

クマを授かることが、マタギの通過儀礼

岡本さんは今年の春、先輩たちと一緒に山に入った春熊猟※では自分の銃でクマを仕留めることはかなわなかった。

追い込んだクマは山中を流れる川の対岸に現れた。岡本さんたちがいる持ち場からその距離200メートル。岡本さんの銃の射程圏内でない。ライフル銃を持つ先輩たちが狙いを定めて撃ち、授かった。一切の迷いがないあざやかな銃さばきに、思わず感嘆のため息が出る。

※春熊猟は猟期期間外のため、秋田県ではクマの生息調査のための個体数調整捕獲として、推定繁殖数の3割を捕獲上限に許可。

マタギにとって、クマやウサギ、鴨などの狩猟鳥獣や山菜、キノコ、川魚などは、すべて山の神様からの授かりものである。その中でもクマは特別なもので、クマを撃ちとることを、感謝をこめて「授かる」という。

「マタギはクマを授かるための狩猟の腕と胆力を当たり前に持っています。クマを授かることが一人前のマタギと認めらもらうための通過儀礼なので、ウサギやイノシシなど、他の動物ではダメ。だから僕もクマを授かりたいんです」

淡々とした語り口の中にも、一人前のマタギをめざす岡本さんの迷いのない熱量が伝わってくる。だが、マタギという生き方を見つけるまでの20代の数年間は、岡本さんにとって挫折感にまみれて迷走を続ける日々だった。

「マタギ」という生き方にたどり着くまで

振り返ると、迷走の始まりは大学4年の就活の失敗だったかもしれない。

将来像が描けず、就活に完全に乗り遅れた。4回生の年末ぎりぎりに内定をくれたのは東京の保険会社。仕事は電話営業だった。「これくらいならやれる」と思って入社したものの結果を出せない。挫折感に耐えきれず、1年半で退職する。

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