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「父が孤独死の大豪邸」姉妹がカメラを入れた理由 遺体の状態によって、死の受け入れ方は変わる

東洋経済オンライン / 2024年11月30日 11時0分

僕と同じように孤独死の現場に立ち会った遺族の方々も、“なんで何もしてあげられなかったんだろう”と後悔していることが多いと思うんです。できれば、そういう気持ちを思い出してほしくない。だから、孤独死の現場は基本的に動画にしていないんです」

では、なぜ今回の現場は動画や記事として発信することにしたのか。

それは、もともとYouTube用の撮影をする予定で事前に許可をもらっており、カメラを持って現場に訪れたその日に、孤独死であることを知らされたからである。つまり、遺族も現場を記録として残すことをいとわなかったのである。それには、大きな理由があった。

死後1カ月が経過した現場

イーブイが過去に片付けをした、死後1カ月半が経過した孤独死の現場。部屋の中はガランとして整理されているものの、家は腐敗臭に包まれていた。その臭いは実際に嗅いだことのある人にしかわからない、ほかに形容しがたいものだという。

また、その強力さゆえ、5分もその場にいれば、服から髪の毛、鼻の粘膜まで、全身に臭いがこびりつく。その状態で車に乗ってしまった日には、車内にもしばらく腐敗臭が染みついてしまうくらいだ。

遺体があった場所には体液が染み込み、そこは人の影があるかのように真っ黒になっている。ただ、孤独死の現場に初めて入るスタッフたちは、ビジュアルではなく臭いにこたえ、その場にいられなくなってしまうという。

しかし、今回の現場は、遺体のダメージが著しく小さかった。次女が落ち着いた様子でこう話す。

「怖くて全身を見ることはできなかったんですが、手の先が真っ黒になっていたのは見えたんです。ただ、ドロドロという感じではなく、やせ細った、ミイラのような印象でした。クーラーと扇風機の両方が付いたままだったので、本当に日常生活の中で急に倒れて亡くなったんだと思います」

大きなトラブルもなく、作業は予定通り日が暮れる前に完了した。すべての部屋が空っぽになった実家を前にしても、姉妹はやはり落ち着いていた。親の孤独死をすでに受け入れることができているようだ。

「父を発見した後は何から手を付けていいのかわからず、通帳のことや親戚への連絡など、とにかく手探りでした。父には事前にエンディングノートを渡していたんですが、何も書いてくれていなかったんです。

親も自分が急に死ぬことなんて想定して生きてはいないとは思うんですが、もしものことがあればすべて子どもが引き受けることになるので、やっぱり事前にその辺の話し合いができていたらよかったのかなと思いました」

もし、1日でも発見が遅れていたら…

二見氏によれば、時期が6月であったこと、発見が死後3日と早かったこと、そしてエアコンと扇風機がついていたこと。これらの条件が揃ったことで、ギリギリ遺体の腐敗が進まなかったという。

もし、1日でも発見が遅れていたら、エアコンも扇風機も付いていなければ、体液が漏れ出し、目がくぼみ、眼球が落ち、家中が腐敗臭に包まれていたかもしれない。

「もしそうなっていたら、この姉妹も“なんでもっと早く連絡しなかったんだろう”と、一生後悔を抱えながら生き続けていたかもしれません」(二見氏)

一概に「孤独死」といえど、遺体の状態によってその死の受け入れ方は大きく変わってくるのである。

【写真】「ここで父が亡くなったんです」父が遺した痕跡と、あまりに大きすぎる家の各部屋の様子(45枚)

國友 公司:ルポライター

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