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イーストウッド作品が映画会社から捨てられた訳 94歳巨匠の最後の作品をまるでバックアップせず

東洋経済オンライン / 2024年12月1日 10時0分

『Juror #2』の監督を手がけたクリント・イーストウッド(中央)(写真:Backgrid/アフロ)

ハリウッドのアワードシーズンも、いよいよ本番。賞狙いの作品もだいたい出揃う中、驚くほど“放置”されている映画がある。クリント・イーストウッドの新作『Juror #2』だ。

【画像を見る】製作予算もしっかりかけた『Juror #2』のポスター

イーストウッドにとって記念すべき40本目の監督作。94歳という年齢を考えれば、おそらく最後の映画になるかと思われる。出演者はニコラス・ホルト、トニー・コレット、J・K・シモンズなど、さすがの実力派揃い。

小さな役で出演するキーファー・サザーランドは、自分からイーストウッドにお願いして出してもらったのだという。世界プレミアは10月末のロサンゼルスでのAFIフェスト、北米公開日は11月1日。イーストウッドの『J・エドガー』『アメリカン・スナイパー』『リチャード・ジュエル』もAFIフェストでプレミアを行っているし、賞レースに向けた典型的パターンに見えた。

商業面においても放棄?

と思いきや、イーストウッドと長年組んできたワーナー・ブラザースは、どうやらこの映画を最初から放棄したようなのだ。賞レースに関してだけではなく、商業面においてもである。

北米公開は全米で50スクリーン以下の限定規模で、宣伝広告はほとんどなし。タイトルをまるで聞かないので、一般人はこんな映画があることも知らない。

しかも、メジャースタジオにしては異例なことに、ワーナーは、この作品に関しては興行成績の発表もしないという。さらに、早々と12月にはワーナー・メディア系列の配信プラットホームMaxで配信されることになった。そうなると、劇場まで見にいくモチベーションはますます下がる。

また、この時期は、主要な賞の投票者にできるだけ映画を見てもらうべく、キャストや監督が来る試写を組んだり、しつこいくらいキャンペーン広告やメールが来たりするものだが、それも一切ない。同じワーナーの『デューン 砂の惑星PART2』への力の入れ方と完全に対照的だ。

こんな扱いを受けるということは質が伴わないのかというと、そうではないところが謎なのである。Rottentomatoes.comでの得点は、批評家が93%、一般観客は91%と、上々なのだ。筆者も見たが、映画は決して悪くなかった。

主人公ジャスティン(ホルト)は、アルコール依存症から更生し、妊娠中の妻と平凡な毎日を送るジョージア州の男性。ある殺人事件の裁判に陪審員として召喚されると、出産日が間近で不安を抱えている妻のためにも早く終わるよう願いながら、渋々出廷する。

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