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「高級車に乗る人」が危険な運転をしがちな理由 権力のある人は自分を抑制する力を失いがち

東洋経済オンライン / 2024年12月2日 11時0分

それがきっかけで、彼は考えはじめた。危ない目に遭うときの相手が、いつもオンボロの自動車ではなく高級車であるように思えるのはなぜなのか?

高価な自動車を運転する人は、事故を起こせば失うものがはるかに多いことを思うと、なおさら不思議だった。そのような経験は、ほとんどの人にとっては迷惑な話にすぎないが、ケルトナーにとっては仮説の材料になる。そして、仮説ができたら、彼は検証する。

ケルトナーは、1つ実験を思いついた。1人の研究者に頼んで、ある交通量の多いバークリーの道路沿いの茂みに隠れて、近づいてくる自動車のメーカーとモデルを書き留めてもらった。そして、別の研究者には、自動車の接近を待って横断歩道に出てもらった。自動車はそのまま通過できるものの、いくぶん荒々しい運転が必要になるタイミングでそうしてもらった。それで、どうなったか?

「安価な自動車、ユーゴやプリムス・サテライトの類いでは、横断歩道を走り抜ける割合はゼロ%でした」と彼は2016年にナショナル・パブリック・ラジオで説明した。「高級車は、つまり、メルセデス・ベンツとかですが、46.2%が横断歩道を走り抜けました」。

ケルトナーが自分の研究を公表すると、高価なトヨタ・プリウスのハイブリッド車を運転している人がひどく機嫌を損ね、彼に手紙を書き、自動車が高価かどうかは関係なく、問題は、どんな種類の高級車かだ、と主張した。

これは、ケルトナーのものと競合する仮説だった。金持ちのプリウスの運転者は金持ちのメルセデス・ベンツやBMWの運転者よりも親切である、というのだから。

そこで、ケルトナーは確かめてみた。「じつは、プリウスを運転する人は最悪でした」と彼は笑いながら言った。

権力は人を自己中心的にする

権力についてのケルトナーの研究は、明確な作用を浮き彫りにする。権力のある人は、自分を抑制する力を失う傾向にある、というのがそれだ。「権力に酔う」というのは、まさに打ってつけの描写だ。

権力があるという感覚を強められた人は、他者にどう思われるかは、あまり気にしなくなる。他者の心をうまく読めなくなる。他者に共感する必要を、それほど感じなくなるからだ。彼らは、規則は自分には当てはまらない、と感じはじめる。

ケルトナーは、こう説明した。「より大きな権力を享受する人々は、衝動的に食べたり、性的な関係を持ったり、交通規則を破ったり、噓をついたり、騙したり、万引きをしたり、子どもからキャンディを取り上げたり、失礼な口や、下品な口や、無作法な口を利いたりする可能性が高い」。

「権力は腐敗し、絶対的な権力は絶対的に腐敗する」と述べたアクトン卿は正しかったのだ。

(翻訳:柴田裕之)

ブライアン・クラース:ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン准教授

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