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コピーライターが言語化に最も時間をかける工程 名コピーはその場でパッと思いつくものでもない

東洋経済オンライン / 2024年12月2日 18時0分

私は、さらにもう一歩進んで、この聞く力を他人だけでなく「自分」にも向けてほしいと思っています。つまり、「自分で自分の話を聞く」姿勢です。

そう言われても、ほとんどの人は、そんなことを考えたことがないと思います。学校や会社はもちろん、「自分で自分の話を聞く」ことについて教わる機会はまずないので、当然です。

ですが、この「自分で自分の話を聞く」姿勢こそが、自分の頭のなかを言語化するうえでは必要不可欠なことだと考えています。

言語化力のベースは「聞く力」にある。

なぜ、私がこの結論にたどりついたのかというと、コピーライターの仕事を続けながら、国家資格である「キャリアコンサルタント」の資格を、2023年に取得したことがきっかけです。

「なんで、わざわざ、コピーライターである荒木さんが、キャリアコンサルタントの資格をとろうと思ったんですか?」

資格取得の話をすると、必ずそんな質問をされます。その理由は、意外かもしれませんが、コピーライターの仕事と、キャリアコンサルタントの仕事が、とても似ているからです。

私は「コピーライターの仕事を続けていくうえで、キャリアカウンセリングの知識や技術が、きっと役に立つはずだ」と考えて、勉強をすることにしました。

どんな点で2つの仕事が似ているのかをお伝えする前に、そもそもコピーライターの仕事がどんなものか、なかなかイメージしにくいと思いますので、まずは、そのお話をさせてください。

心を打つ名コピーは、思いつきでは生まれない

あなたは、コピーライターって、どんな仕事だと思いますか?

ときどき、飲み会などの場で、次のように言われることがあります。

「コピーライターなんだから、この場でパッとキャッチコピーを考えてよ」

もしかしたら、あなたも「コピーライターは、キャッチコピーやキャッチフレーズをパッと考えられる人」というイメージを持っているかもしれません。

残念ながら、それは完全に誤解です。私たちコピーライターは、大喜利で次々と笑わせる芸人さんや、即興でなにかをつくるアーティストのように、その場でパッと答えや成果物を出す職業ではないからです。

世の中には、たくさんの広告コピーがありますが、それらのほとんどはコピーライターがパッと一瞬の思いつきで書いたものではありません。

私たちコピーライターは、何時間も、何日もかけて、ようやくたった1行のコピーにたどりつきます。

「えっ。たった1行なのに、なんでそんなに時間がかかるの?」

不思議に思いますよね。なにごとにも効率を求められる世の中において、数日かけて、たった1行というのは、あまりに非効率的に思えるかもしれません。

もちろん、それぞれのコピーライターによって時間のかけ方に差はあるかもしれませんが、少なくとも私の場合は、コピーをつくる時間の「約9割」を、ある工程に使っています。

それが「聞く」工程なのです。

①クライアントや生活者の話を聞く

②自分自身の話を聞く

この2つの「聞く」工程に、コピーをつくる時間のほとんどを使っています。

荒木 俊哉:電通 コピーライター

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