「トラック運転手の給与」上げるのに必要なこと 何がネックになっているかの洗い出しを
東洋経済オンライン / 2024年12月2日 12時0分
トラックドライバーの時間外労働の上限規制適用による輸送力不足により、物流が滞ることが懸念される事で話題となった物流の「2024年問題」。実際2024年もあと1カ月で終わりを迎え、物流領域でも状況改善に向けた動きが進んでいるが、その焦点の1つが物流運賃、すなわち輸送料金の適正化だろう。本稿では、運賃の値上げやドライバーの実質的な給料改善に向けて具体的に現場でどのような取り組みが行われているのかを紹介する。
物流運賃が低く抑えられてきた背景
物流運賃がこれまで低く抑えられてきた背景には、複雑な要因が絡んでいる。最も影響があった要因としては、1990年から2000年にかけて行われた規制緩和だと考えられる。運送事業者の新規参入が容易になり、料金設定の自由化も進んだ結果、競争が激化し運賃の低下が進んだというのが定説である。
ドライバーの賃金という意味においては、運送事業者間の関係が生み出した「多重下請け構造」も低下の大きな要因である。物流領域では、元請事業者から2次請け、3次請けの実運送事業者に配送を委託する「多重下請け構造」が常態化している。多重下請け構造の底辺に近づくほど、中間マージンが引かれて低賃金になってしまっているのだ。
こうした中、日本ロジスティクスシステム協会が2023年11月に発表した「物流変革の波:2024年問題対応に向けた実態調査レポート」によれば、依頼主企業(荷物の所有者)と物流事業者(依頼主から輸送や倉庫の活動を受託)の9割以上が輸送費の上昇を課題と認識している。また、物流事業者のうち9割が輸送費の上昇対策に取り組んでいるという。
最近では、依頼主企業による運賃適正化の議論も始まっている。例えば、スーパーマーケットや冷凍食品、製紙業の業界団体などが2023年12月に策定した「自主行動計画」において、適正運賃の支払いについて触れている。物流に対して理解のある経営陣は、運賃適正化に前向きなのだ。
例えば、燃料価格の変動に伴うコスト増減を変動費として設定する「燃料サーチャージ」の導入が挙げられる。また、荷物を運んだ後の「帰り便」は空車で戻るケースが多いため、依頼主側で帰り便の積荷を斡旋したり、他の依頼主企業を紹介したりすることで、物流事業者の利益を向上させる事例が出てきている。
これらの事例はほんの一握りである。全体の傾向で見ると、運賃は上がらず、物流事業者は依然として厳しい状況にある。燃料費や車のメンテナンスコストなどが高騰している中で、運賃が上がらない場合、こうしたコストは実運送事業者が負担することになり、経営を圧迫する。
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