NewJeans騒動で見えた「K-POP商法」の問題点 韓国社会は騒動をどう受け止めているのか
東洋経済オンライン / 2024年12月3日 8時0分
そして、「NewJeans」という名前については、商標権はADORの所有であるため、「NewJeans」の名前のままで活動することは難しいという見解で一致している。
ADORは内容証明への回答を記者会見の少し前の28日に送っていた。NewJeansからの要求事項については、ミン前代表の解任ついては役員会で決定した事項であること、他の項目については解決できるよう努力しているとし、契約は2029年7月31日まで有効であるという立場をとっている。
ADORの今後の動きが注視されるが、前出の記者はこう見立てる。
「専属契約の確認訴訟を起こすのか、それともADORを通さず、第三者を通した収益が生じる活動をNewJeansが行った場合は、活動禁止を求める仮処分申請を提出して活動を禁止させるかもしれないという観測が流れていますが、活動禁止はアーティストを応援するという立場をとっていることと矛盾するのでそう簡単ではない。それにいくら原則で動くHYBEでも世論の動きによっては裁判には慎重にならざるをえないのではないでしょうか」
今回の事態はいちアーティストだけの問題ではなくなった。冒頭で韓国メディアが指摘したように、もし、NewJeansに有利な方向に事態が動けば、K-POPのエコシステムに影響を及ぼすことは必至といわれる。
K-POPは、所属事務所がダンスやボイストレーニング、語学、さらには心理的な側面からの教育なども含め練習生を育成し、デビューさせることで成り立ってきた。そこへ多額の投資をし、デビュー後にその資金を回収するシステムだったが、そうしたモデルが崩れる可能性もでてくる。
HYBEの投資家からは不満の声
今回、NewJeansが記者会見で専属契約の解約を通告したことにより、HYBEの株価は4%下落した。
通信社のニュース1は、「こんなに株価に影響する事案をまたメディア報道で知ることになった。これほど株価に影響を及ぼす事案を株主が公示の1つもないまま知らなければならないのか」「HYBEがNewJeansへ違約金の訴訟を起こさなければ背任で経営陣を訴える」などの投資家たちの声を拾っている(11月29日)。証券業界の関係者は、「不確実性が高まり、K-POP界へ投資することも慎重になる」と話す。
NewJeans が投じた一石の波紋はどう広がっていくのか。HYBEもNewJeansからの契約解約通知を受領したとし、「適切に対応する予定」なことを明らかにした。
どんな結果になるにせよ、人々を癒やすエンターテイメント界に苦い後味を残すこととなった。アーティストが公の場で契約について語らなければならないほどの事態に追い込んだHYBEとミン前代表の責任は重い。
菅野 朋子:ノンフィクションライター
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