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日本人に多い「会社嫌い」なぜ深刻な問題なのか 社員を機械のように考えるマネジメントの誤り

東洋経済オンライン / 2024年12月4日 11時0分

マネジメントにとって、個と個との関係性が効果的に作用し、個の潜在能力が最大限に発揮できる社会環境をつくることが、最も重要な役割である。本書では、それを帰属意識、絆づくり、メディアとメッセージ、信頼の深さ、社会的空間・社会的時間の切り口で説明していく。

それらの中から、筆者が興味深いと感じた点をふたつだけ挙げよう。ひとつは職場をトライブ(部族)、ひらたく言えばコミュニティにせよとの指摘。

トライブでは共通の目印やシンボルを身に着け、ジャーゴン(社内用語)を話し、会社の創業物語を共有する。こうして形成される帰属意識が、共通の敵に対して一致団結して戦う姿勢を引き出し組織の効果性を高める……。なんだか昭和の会社を思い出さないだろうか。

もう一点は、身体的同調性の重視だ。

「この集団で行うラジオ体操が、日本の労働者や経営者が会社に対して深い忠誠心を抱いた理由の一つだった(中略)しかし新たな千年紀に入ると、日本の産業界が経験した一連の経済ショックのせいで、この習慣の価値に疑念が生じた。(中略)新世紀が求める独立志向の妨げになるとされた。(中略)しかし、企業が朝のラジオ体操を取り止めたのは正しい選択だったのだろうか。」(168ページ)

身体的同調(ラジオ体操、ダンス、合唱、笑など)は、エンドルフィンの効果を増幅し絆を強くするというのに、個の独立志向を重視するがゆえ、それを取り止めたように見られているのは興味深い。現代に合う身体的同調行動を探すべきかもしれない。

バブル崩壊後の日本企業では、日本的経営を構成していた多くの制度や習慣を悪しきものとして捨て去っていった。しかし、それらの中には社会脳によるルールに適っていたものも多かったのではないだろうか。本書を読んでいると、そういう思いにかられることが幾度もある。

従業員エンゲージメントが低い日本企業

毎年米ギャラップ社が発表している従業員エンゲージメント調査によると、今年も日本は139か国中最下位レベルである。

従業員エンゲージメントが低いということは職場がトライブとなっておらず、個のウェルビーイングレベルも低いと考えられる。そういう組織では生産性は上がらず、イノベーションも生まれにくいという。どこで道を誤ってしまったのだろう。

『「組織と人数」の絶対法則』は、筆者が2021年に著した『人の顔した組織』(東洋経済新報社刊)と重なる部分が多いと感じた。どちらも組織を機械のアナロジーで語るべきではないとの主張から議論をスタートしている。

その前提に立つならば、日本企業にはアドバンテージがあるはずと信じたい。かつて日本企業が得意とし、現在は失われてしまったかのような社員個々のウェルビーイングと組織能力向上の両立。本書からは、それを現代に即した形で実現させるためのヒントが得られるだろう。

福澤 英弘:株式会社アダット代表取締役

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