三井住友建、麻布台ヒルズ住宅750億円損失の深層 「日本一の高さ」の称号を求めた代償は大きすぎた
東洋経済オンライン / 2024年12月4日 7時20分
「とどのつまりは初動ミス。最初の段階でしっかり検証して、人材も投入して対応していれば、ここまで損失が大きくなることはなかった。悪い連鎖になってしまった」
【業績推移を見る】三井住友建設は2024年度に「再びの赤字転落」となる
準大手ゼネコン、三井住友建設のIR担当者はそう口にして肩を落とした。
三井住友建設は11月12日、現在施工中の国内大型建築工事で131億円の工事損失を計上すると公表した。それに伴い2024年度の最終損益は80億円の赤字になる見通しだ(従来は45億円の黒字予想)。2021年度から2年連続で最終赤字を出した後、黒字へ復帰したが、再びの赤字転落となる。
損失を計上した施工中の工事とは、タワーマンション「麻布台ヒルズレジデンスB」のことだ。2023年11月に開業した大規模複合施設「麻布台ヒルズ」(東京・港区)に隣接し、来年8月に完成予定。地下5階・地上64階建て、約260メートルという日本一の高さを誇る超高層マンションとなる。
「身の丈」を超えた工事
これまでにも大幅な工程遅延が生じており、度重なる損失を計上していた。2021年度に219億円、2022年度に315億円、2023年度に92億円。今回を含めた累計損失額は757億円に上る。
関係者は一様に驚いている。「(工事の請負金額は600億円以上との見立てもあるため)売上高に匹敵するほどの金額が損失計上されたことになる」(中堅ゼネコンのベテラン社員)からだ。
「三井住友建設は『身の丈』を超えた工事を請け負った」。複数のゼネコン関係者はそう指摘する。
麻布台ヒルズのマンションは、大深度地下工事を伴う超高層建築物件で難易度が高い。そのため、「そもそもは麻布台ヒルズプロジェクトの主要施工業者であり、建築の名門として知られる清水建設の受注が自然な流れだった」(準大手ゼネコンの幹部)と言われる。
ただ、「高速道路や地下鉄がすぐ側で走っている、むちゃくちゃ難度の高い工事。清水は『ここはいいです(タワーマンションはいらないです)』と受注を見送ったようだ」(同)。
そこに飛びついたのが、三井住友建設だった。「当時は経営環境もいい状況で、経営トップも『いける』と判断したのだろう。『日本一の案件』という称号も欲しかったのかもしれない。会長・社長案件として、検討不足のまま進められた」(三井住友建設のIR担当者)。
マンション工事では過去にもトラブル
「超高層マンションに強い」と定評のある三井住友建設だが、実のところ、建築工事において過去に何度かトラブルを起こしている。
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