ダイドー、「トルコで大躍進」の知られざる戦略 現地ブランド品が絶好調、背景には中東問題も
東洋経済オンライン / 2024年12月5日 8時40分
自動販売機でおなじみ、国内飲料大手・ダイドーグループホールディングスの業績が好調だ。
11月26日に発表された2024年2~10月期決算。売上高は前年同期比9%増の1801億円、営業利益は同10%増の64億円の増収増益となった。会社の通期営業利益予想は44億円だが、すでに大幅に超過している。
この結果を受け、翌27日の株価は前日終値比12%高の3290円となり年初来高値を更新。その後も高値更新を続けている。
海外の営業利益は前期比6倍増の成長
サプライズとなったのは海外飲料事業だ。営業利益は42億円となり、前年同期比518%増と大躍進している。牽引したのは海外飲料事業の売上高の約7割を占めるトルコだ。
ダイドー傘下のダイドードリンコは2016年、トルコの食品最大手・ユルドゥズ・ホールディングから飲料製造子会社3社を買収。トルコには日本の競合他社が少ない上に、人口増加で飲料市場の中長期的な拡大が見込める。すでに高い認知度を持つブランドや製造工場を獲得することで、1から販路を開拓する必要がない点もポイントだった。
トルコは近年、急速にインフレが進み、2023年1月期以降、トルコ子会社の財務諸表へ超インフレ会計(注)を適用している。第3四半期時点で適用前に53億円あった営業利益は、適用後に42億円へ押し下げられた。
それでも、前期の第1四半期に5%程度だったトルコ事業の営業利益率(現地通貨ベース)は、今期の第3四半期に20%へ迫る勢いで伸長している。トルコはグループ全体を支える収益柱へと急成長しているのだ。
(注)超インフレ会計とは
3年間の累積インフレ率が100%に近づいている、または100%を超えている「超インフレ経済下」では、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められた要件に従い、会計上で以下の調整が必要になる。
①日本円換算時、資産・負債及び収益・費用項目を決算日レートで換算する
②物価指数の変動を財務諸表に反映する
なぜトルコがこんなに伸びているのか。好調の要因について、ダイドーグループホールディングスの髙松富也社長はこう説明する。「中東情勢の悪化を発端として、トルコのナショナルブランドである当社の現地商品への需要が高まっている」。
トルコの飲料市場は、アメリカの飲料大手コカ・コーラやペプシコなどグローバルメーカーが大きなシェアを持つ。だが、中東情勢を背景に、昨年10月頃からアメリカ企業の商品の不買運動が発生。飲料で特に大きな影響を受けたのがコーラだった。トルコでグローバルブランドのコーラの売り上げは大幅に減少している。
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