「AIシフト」がもたらしたインテルCEOの退任劇 半導体産業の構造変化がもたらす地殻変動
東洋経済オンライン / 2024年12月6日 7時40分
IDM 2.0に修正を加えながら最先端の半導体製造におけるリーダーへと復帰すれば、あるいは戦略をやり切ることもできたかもしれない。しかし、今回の退任劇からわかるのは、インテルの株主はゲルシンガーの戦略を支持できなかったということだろう。
その背景にあるのは、AI戦略の遅れと工場を持たないファブレスのビジネスモデルを採用する企業の好調さ、将来的な成長余力にある。
ファブレスのNVIDIAは70%、直接的なライバルのAMDも51%という水準を維持している一方、半導体製造専門で各社が生産委託を行っているTSMCは54.3%のグロスマージンを達成しており、インテルの収益構造の脆弱性は際立っている。
AIによる産業構造の変動
背景にあるのは、最先端の半導体をめぐる事業環境の変化だ。かつて業界で最も多くのキャッシュを回していたのはPC向けプロセッサだった。しかし現在はAIチップ市場と拮抗しており、マージンはAIプロセッサのほうが高いうえ、将来的な市場規模予測でも大きく見劣りする。
PC向けプロセッサ市場は2023年時点で約400億ドル(約6兆円)規模といわれているが、インテルは約75〜80%のシェアを維持し屋台骨になっていることは多くの人が承知していることだろう。AMDが残りの約20〜25%を占め市場環境は安定している。
しかし、この年間の成長率は1〜3%程度にとどまっており、スマートフォンやタブレット向けではインテルは立ち位置を作れていない。
一方、AIチップ市場は調査会社デロイト トーマツが2024年時点で約500億ドル規模と推定しており、すでにPC向けプロセッサー市場を上回る規模に成長している。しかし、さらに大きな違いとなっているのが成長率だ。
AIチップ市場は年間成長率40〜50%以上で成長しており、NVIDIAのグロスマージンは同社決算報告によると74%に達している。今後の予想については、市場調査会社によってさまざまだが、パーソナルコンピューター向けやスマートフォン向けの需要がAI以上に伸びる可能性はないといえるだろう。
すなわち、最先端の半導体製造技術を開発するキャッシュフローを生み出すエンジンは圧倒的にAIチップになっていくということだ。
こうした市場背景をもとに見直してみると、データセンター向けAIチップ市場で70%のシェアをもつNVIDIAに注目が集まるのは当然だが、パソコン向けプロセッサでインテルのライバルであるAMDも、Microsoft AzureやOracle Cloud Infrastructureへの採用を実現して15%のシェアを稼いでいる。インテルのシェアは5%以下だ。
見通しが良い側面と見通しの悪い側面
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