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「AIシフト」がもたらしたインテルCEOの退任劇 半導体産業の構造変化がもたらす地殻変動

東洋経済オンライン / 2024年12月6日 7時40分

このように考えれば、インテルの苦境も致し方ない。

TSMCのように成熟しグローバルでトップの実力を備えたファウンドリ事業者には、世界中の先端チップの受注が集まる。つまり経験値が極めて高くなるが、そのTSMCと同等の高い歩留まりや効率的な設備運用で収益性を高め、存在感をまったく示せていないAIプロセッサ市場が急成長している中での巨額投資を正当化することは難しかったのだろう。

今後、主戦場が変化していく中、パソコン向けプロセッサとに関しても、力関係が変化していくことは十分に考えられるだろう。当面の間インテルがパソコン向けプロセッサーの主役から滑り落ちることはないだろうが、中長期的にはAMDなどとの関係が変化する可能性はある。

また、言うまでもなくWindowsパソコンもArmへの対応が進められており、ソフトや環境の面でもだんだんとインテルへの依存度は下がっていく可能性が高い。まだ始まったばかりの業界の地殻変動は、これからより一層激しくなっていくだろう。

またより根深い問題として存在しているのが、AIの開発だ。AI開発はNVIDIAが提供する開発環境であるCUDA(GPUを活用する開発言語)が業界標準となっており、AI開発コミュニティが大きく変化するとは考えにくい。

業界全体を見渡すと、その行方は比較的見通しが良いともいえるが、切り口を変えると見通しが悪い側面もある。

TSMCへの依存度の高さに対する懸念

インテルは“アメリカ内に最先端半導体技術を取り戻す”ことを旗頭に、アメリカ政府から巨額の支援を得ている。直接の投資としては最大89億ドルの助成金だが、最大110億ドルの投資税額控除と約200億ドルの低金利融資枠を確保している。

これらの支援は、インテルが建設しているアリゾナ、オハイオ、ニューメキシコ、オレゴンの半導体製造施設と先端技術開発への投資に対するものだ。同様の助成はドイツ政府からも約100億ユーロ規模で実施される。

これらの計画は中断することが難しいはずだが、半導体製造のジャンルにおけるインテルの存在感がどのようになっていくのか、見通しが悪くなったことは間違いない。結果的に、アメリカ内に最先端半導体技術が維持できなくなったとしたならば、最先端技術を独占しているTSMCへの依存度の高さに対する懸念を払拭することはさらに難しくなる。

米中関係の変化に対して敏感になるのはもちろん、自然災害リスクなども考えられる。インテル以外の競合としてはサムスンもあるが、彼らもまたTSMCには対抗できておらず、サプライチェーンの問題はさらに深刻化していくかもしれない。

本田 雅一:ITジャーナリスト

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