「売れなくなった」を売れるに変える最強思考の型 正しく論理的に考えるだけでは解決策は見つからない
東洋経済オンライン / 2024年12月11日 13時0分
そして、そのインサイトをもとにしたアイデアは、行き詰まった現状を突破し、少ない力でより大きな成果を生み出す力を持っているのです。
私は広告会社・電通で長年、マーケティングの仕事に携わってきました。特に、「売れない」「売れなくなった」商品をどうにかするための戦略を考える場面に何度も立ち会ってきました。その戦略に基づいて、人々に商品を買ってもらうための方法や広告の出し方が決まっていくのです。
クライアントから寄せられる相談の多くは、「これまでの手法が通用しなくなった」「新しいアプローチが必要だ」という切実なものです。ロジカルに情報を集めて考えるだけでは解決できないという難題に直面することも何度もありました。
こうした状況で重要だったのが、「インサイト」を使って、一気に問題を解決できる突破口を見つけ出すことでした。
なぜ、インサイトを見つけると問題を解決できる?
さて、なぜ「インサイト」がいいのでしょうか?
それは、普段は表に出ない「隠れたホンネ」にたどり着けるからです。
ここで一つ事例を見ていきましょう。
下がり続けるミルクの消費量の落ち込みを食い止めて、消費量を上げるために、1993年にアメリカのカリフォルニア牛乳協会が行った広告、「ミルクある?(got milk?)」キャンペーンの事例です。
出典:『アカウントプラニングが広告を変える 消費者をめぐる嘘と真実』ダイヤモンド社・ジョンスティール著 をもとに筆者要約
90年代のカリフォルニアでは、ミルクの消費量が減少していました。調査によると、人々がミルクを飲まなくなった理由は、次の3点だと考えられていました。
・ミルクに含まれる脂肪分が気になるから
・「子どもの飲み物」というイメージを持たれたから
・コーラなどの他の飲料と比べると「パッとしない」と思われていたから
そこで、こうしたネガティブなイメージを払しょくするために、広告キャンペーンが何年にもわたって展開されました。「ミルクは身体にいい」とあの手この手で語りかけ、さまざまな年齢の人が牛乳パックを手に歌って踊り、明るい音楽やメロディーを使った広告でパッとしない印象を変えようとしました。その結果、ミルクのイメージを上げることには成功。しかし、ミルクのイメージが改善されても、売り上げは依然として下がり続けたのです。
こうして行き詰まったところで、「どうしたらミルクをもっと買って、飲んでくれるようになるのか」「どうしたら行動を変えさせることができるのか」を考えることになりました。
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