中山美穂さんの近親者に突撃するマスコミの病理 過熱報道も迷惑系YouTuberも愚かな受け手がいる
東洋経済オンライン / 2024年12月12日 8時25分
加えて、「親族だから」と結び付ける報道にも反感が出つつある。つい先日には、「はいよろこんで」で注目を集めたミュージシャン「こっちのけんと」さんが、NHK紅白歌合戦に初出場するとの話題で、大手ネットメディアが見出しに「菅田将暉の弟」を使いつつも、アーティスト名は出さなかったことで、「失礼ではないか」との非難が殺到した。
「より過激なコンテンツ」を求めている層
読者や視聴者は、「世間感覚とのズレ」に敏感だ。そして非常識だと判断すると、即座に興味を失い、批判的な考えをもつ。世間へのアンテナをもっているはずのメディアが、それでもなお、こうした手法を続ける理由はどこにあるのか。
筆者はその背景に、情報が洪水のように押し寄せる時代の中で、「より過激なコンテンツ」を求めている層が一定数存在することがあると考えている。これは迷惑系YouTuberのターゲット層と重なる。
私人逮捕を見て「スカッとしたい」のも、遺族の涙を見て「同情したい」のも、感情ベースの動機だ。いずれも受け手は、情報をニュースではなく、エンタメに近いコンテンツとして消費している。
過激とまで言わずとも、「わかりやすい答え」を求める人は多い。ネットで簡単に情報を集められる時代だからこそ、データに基づく考察や、経験に基づく分析に、まどろっこしさを覚えて、一刻も早く結論を欲しがる。SNS上で「死因はヒートショックだ」と断定的に伝えた人々も、そうした文脈に位置づけられるだろう。
マスコミを「さらなるマスゴミ化」へ導く人々
そして、これらの路線は一定程度の支持を集めている。新聞社が昨今、読者の感情を揺さぶろうとする「エモい記事」に傾斜しつつあるのも、同様の理由があると考えている。その際に掲げるのは、「メディアは受け手が求める情報を届けるのが使命だ」といった大義名分だ。
あらゆる考え方の人に「知る権利」は保障されている。しかし、情報アクセスの手法が倫理的でなかったり、編集と称した脚色が加えられていたりすれば、本来求められている情報との差異が生じる。そもそも、それは「知る」なのか。娯楽のための「楽しむ」になっていないか。
とはいえ現状では、このような「情報」を欲している層が、一定数いる。また、そこに向けた商売をする人々が存在する以上、メディアスクラムも迷惑系YouTuberも、残念ながら消えることはないだろう。
当然だが、センセーショナルな内容ではなく、ファクトに立脚した報道を求める人も相当数いる。おそらく本記事の読者も、安易に感情になびくのではなく、あらゆる情報を集めて、総合的判断を行える人々だと信じている。新聞等のメディアだけでなく、経済メディアの記事まで読む人というのは、積極的に情報を集めたうえで、自分なりの判断を下すことができる人だろうと推測できるからだ。
しかしながら、マスコミを「さらなるマスゴミ化」へ導く人々がいることは、決して忘れてはならない。今回の中山美穂さんの訃報は、その一端を垣間見るような事例だったと言えるだろう。
城戸 譲:ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー
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