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組織を腐敗させない「ランダムなくじ引き」の力 偶然で権力を与えれば傲慢な行動を防げる

東洋経済オンライン / 2024年12月13日 11時0分

くじ引きなどにより偶然に権力を握った人のほうが、傲慢な行動をしないことがわかっています(画像:スムース/PIXTA)

横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。

では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。

今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

古代アテネで用いられた「クレロテリオン」

もし権力が腐敗するとすれば、権力に飢えていて自らしゃしゃり出てくるような、腐敗しやすい小さな集団を腐敗させるよりも、ランダムに集まった人々の集団を腐敗させるほうが段違いに難しい。

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数千年前、古代アテネの人々は、ランダムな数の持つ腐敗しない力を信頼していた。その結果、彼らは民主的な腐敗防止装置を考案した。それは巨大な石板で、何列ものスロットが入念に彫られていた。

この装置は、「クレロテリオン」と呼ばれていた。重要な決定を下すときには、市民はそれぞれ、「ピナキオン」という自分の専用の木か青銅の小さな板を装置のスロットに差し込んだ。

それから役人がハンドルを回すと、装置から黒いボールか白いボールがランダムに出てくる。ボールが黒なら、いちばん上の列の市民が考慮の対象から外される。もし白なら、ランダムに割り当てられた列の市民が任務に就く。

数字の書かれたボールが中で跳ね回る現代の抽籤(ちゅうせん)器の、事実上の古代版のようなものだが、くじの大当たりの数字を選ぶのではなく、意思決定者を選ぶのに使われた点が違っていた。

ランダム性を利用して市民を権限のある地位に就けることを、「くじ引き制」という。くじ引き制の提唱者のうちには、選挙は完全に廃止し、くじ引きによる統治を導入するべきだ、と主張する人もいる。

だが、この提案には多くの問題がある。まず、民主的な選択がなくなる。そして、核実験禁止条約の交渉といった政治課題の一部には、キャリアを通して培われる特別な専門技術・知識を必要とするものもある。

とはいえ、くじ引き制はそっくり退けるべきであるということにはならない。むしろ、公職者を選ぶためではなく、公選議員に助言をするために利用するべきだ。

「市民議会」を開催することの意義

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