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ドコモ通信網、進化する「24時間監視」の最前線 AI予兆検知で故障防ぐ、能登の教訓を活かす

東洋経済オンライン / 2024年12月13日 7時30分

特に深刻だったのが、陸路からのアクセスが困難な地域の復旧だった。道路の寸断に加え、余震や降雪も復旧作業の障害となった。ドコモは全国から技術者と機材を集結させ、のべ1万人体制での復旧にあたった。

能登半島地震では、新たな復旧手段も導入した。その一つが船上基地局。海底ケーブル敷設船「きずな」を活用し、輪島市沿岸部のエリア復旧を行った。船上基地局では同船にKDDIも設備を持ち込み、キャリアの垣根を越えた協力を行っている。また、輪島市の大沢地区では自衛隊のホバークラフトを活用して機材を搬送。陸路が寸断された地域でも、海からのアプローチで通信を確保した。

こうした多様な手段を駆使した結果、1月17日には立ち入り可能な地域の応急復旧を完了。3月1日には99%まで回復し、3月17日に完全復旧を果たした。ただし、「本来の伝送路が復旧するまでは、衛星回線などで応急的に対応している箇所もあります」と竹内室長は説明する。

能登半島地震を契機に新しい設備も導入している。可搬型のスターリンク端末だ。今回の地震を契機に本格導入されたこの装置は、道路寸断で車両が入れない場所での救世主だ。

スターリンク端末は、9月の奥能登豪雨で早速活躍することになった。従来の衛星通信設備は大型のパラボラアンテナが必要だったが、スターリンクは機器が軽量でコンパクト。数人で運べるため、道なき道を担いで避難所や伝送路が寸断された基地局まで運ぶことができる。

「従来の衛星通信に比べて装置が軽量なだけでなく、衛星の捕捉も早く、通信速度も格段に向上しています」と竹内室長は説明する。現在約130台を配備し、車両搭載型と手で運べる可搬型の2タイプを使い分けている。車両が入れる場所では車載型を、道路が寸断された場所では可搬型を、といった具合だ。

移動基地局車両も進化している。従来は大型の衛星アンテナを搭載していたが、スターリンクの導入により小型化が可能に。道路状況が悪い場所でも入りやすくなった。「現場の状況に応じて、最適な手段を選択できる体制を整えています」と竹内室長は語る。

災害対策の次なる一手

今回の経験を踏まえ、ドコモは半島部の伝送路を3ルート化するなど、インフラの冗長化も進めている。また、復旧拠点も全国に整備中だ。「災害は地震や台風といった単純な分類では片付けられません。場所も季節も状況も異なる中で、その都度新しい教訓を得ています」と竹内室長は語る。

そしてドコモは、さらなる通信手段の多様化も視野に入れている。2026年を目指して、成層圏から通信エリアをカバーする航空機型基地局「HAPS」の実用化を検討。また、アマゾンが計画する低軌道衛星「プロジェクト・カイパー」の活用も視野に入れているという。スターリンク、HAPS、静止衛星など、複数の選択肢を組み合わせることで、より強靭な通信インフラの構築を目指す。

止まらない通信インフラの実現。それは地上から宇宙まで、あらゆる技術が結集した終わりのない挑戦なのかもしれない。

石井 徹:モバイル・ITライター

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