釣り人の悩み解決"神施設"に学ぶ「そこそこ起業」 「この価格でこのサービスはアリ?」から考える
東洋経済オンライン / 2024年12月17日 14時0分
ニーズがあるのに、サービスが生まれないというのはどういうことなのでしょうか?
そんなことを考えている時に思い出したのが、ヴァティン(パリ・ナンテール大学)の価値評価に関する論文です。
「価値」はいかにして生まれるのか?
私たちはついつい、そのサービスが希少であるとか、その商品に用いられている素材や技術が高価であるとか、提供するのに大変な労力がかかっているとか、商品・サービスに内在する何かに「価値」の源泉があると考えがちです。
それに対してヴァティンは「価値評価のもとで、価値が発生する」という、大胆なアプローチを試みます。例えば金は、それそのものはただの鉱物でしかありません。
金1グラムあたりの換算金額という価値評価の指標とセットとなって、初めて鉱物としての金は他の商品やサービスと交換可能な「財産」という価値が生じているわけです。
これは金のような鉱物資源に限った話ではありません。私たちが勉強を通じて蓄積した知識や、肉体を利用して提供する労働といった活動そのものも、成績やノルマの達成度などで「評価される」ことで初めて、金銭(給与)と交換が可能になり価値が生まれます。
このヴァティンの価値評価という考え方を踏まえると、「釣った魚をさばいてほしい」というニーズが確かにあるのにサービスがほとんど生まれないのは、「魚をさばく」というサービスをどう評価するか、「価格」を決定できる指標がないことが原因と考えることができるのではないでしょうか?
確かにスーパーでは「おさしみのパック」のように下処理済みの魚が販売されていますが、その最終金額のうち、魚をさばくという工程の金額がいくらなのかは不明です。
売り場に並ぶ魚の最終価格に人件費として含まれていますが、商売上の慣例として、「魚をさばく」という単体の工程の価値は計算されていないのです。
要は1匹あたり、何円の代金をいただくのが妥当なのか、誰もわからないから、ニーズがあっても手が出しづらい状況にあるわけです。
ならばヴァティンの議論に基づいて、少し発想を変えてみましょう。
「今までにないサービスを提供する」のであれば、とりあえずそのサービスに「価格」をつけて初めて、お客様はそのサービスに価値があるかどうかが判別できるのではないでしょうか?
「釣人の駅」の場合、アジは1匹150円で下処理をしてもらえます。おそらく、この1匹あたりの価格には、明確な根拠はありません。
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